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(写真:つのだよしお/アフロ)

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は米ニューヨークで2日(現地時間)、投資家向けに非公開のミーティングを開催した。参加者によると、アクティビスト(物言う株主)として知られる米エリオット・マネジメントから2兆円以上の自社株買いや「ビジョン・ファンド」の透明性を求められていることについて、検討する意向をにじませながらも、「Many people get lost in noise.」と「エリオットからの諫言(かんげん)を雑音と示唆」(金融関係者)し、改めて自らの経営スタンスの正当性を訴えたという。これまでは株主の諫言ですら一蹴できるだけの結果を出し続けてきた孫会長兼社長だが、今後もその神通力は通用するのだろうか。

 孫会長兼社長はミーティングの中で、今後は社外取締役や株主の指摘にもっと耳を傾ける、と断りつつも、過去のソフトバンクグループの投資実績を示しながら「これほどの結果(数字)を出してきた人はいるのか」と自信満々に自身の経営の正しさを訴えたという。そして冒頭の「noise」発言。これをエリオットに対する挑戦と受け止めた参加者もいたようだ。

 会合ではエリオットが要求している巨額の自社株買いと社外取締役の増員、ビジョン・ファンドの運用の透明化については否定も肯定もせず、玉虫色の発言で済ませたというが、言葉の端々に自信とエリオットへの対抗心をにじませた。

 その自信はビジョン・ファンドの2号についての言及でも表れた。規模を従来の計画よりも縮小し、1号ファンドに付随したブリッジ型にする可能性に触れつつも、「(会場にいるファンドマネジャーなどの)みなさんはビジョン・ファンドのように16%のIRR(内部収益率)を上げているのか」とニヤリとする場面もあったという。

 経営難に陥っているシェアオフィスの米ウィーカンパニーへの巨額投資が批判されていることについては、「下位15%の失敗事例が批判されているが、リターンの9割は上位15%の投資案件が稼いでいる。トータルで見て16%の利回りは何ら失敗ではない」と強調したという。

 さらに新型コロナウイルスの影響もあり足元で世界的に株価が下落していることについては、「バリュエーション(株価評価)が下がったため投資のチャンス。2020年は最高の年になるかもしれない」と引き続き活発な投資スタンスを崩さない構えを見せた。

 このほかビジョン・ファンドの2号が注目する分野としては、トランスポーテーション(輸送)の世界で「破壊」が起き、投資チャンスが発生するとの予想を示した。またウィーカンパニーについては、投資したバリュエーションについては後悔しているものの、会社の方向性とビジョンについては楽観的な見方を示したという。

 これまで面と向かって物申す人が世界中にほとんどいなかった孫会長兼社長。そのためエリオットが物を申した後にどんな発言をするのか、今回のミーティングは多くの投資家が注目していた。そこで見せたのは一瞬、殊勝なふりをしながらも結局は自信満々のこれまでと変わらぬ「孫正義」の姿だったようだ。

 だがウィーカンパニーの一件などで「孫会長兼社長を見る周りの目はやや変わってきている」(外資系投資銀行幹部)のもまた紛れもない事実。エリオットの諫言を雑音として吹っ飛ばせるような結果を再び出さないと、神通力はどんどん薄れていく。

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