大手百貨店5社の2月売上高速報が3月2日、出そろった。インバウンド(訪日外国人)による免税売上高が新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ。大手5社は日本での新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して、3月中の営業時間の短縮を決めており、落ち込みはさらに深刻になる恐れがある。

 大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ・フロントリテイリングは、2月の百貨店事業の売上高が前年同期比21.4%減と低迷した。免税売上高が75%減と大きく落ち込んだことが響いた。訪日客数は74%減り、客単価も3%下がった。

 今年の春節は1月下旬と、昨年の2月から先ずれしたため、2月の免税売上高は新型コロナがなくても下押しされている。ただ、免税売上高の8割超を占める中国人客は、じっくり買い物を楽しむために、混雑する春節を避けて分散して来日する傾向が強まっており、今回の急ブレーキは「コロナショック」の要因が大きそうだ。

 特にグループで最もインバウンド売上高が大きい心斎橋店(大阪市)は、売り上げ全体が5割近く落ち込んだ。同社広報は、「昨年10月の消費税増税の影響から、徐々に(富裕層向けの)外商部門が復活するとの期待があったのに、新型コロナの影響で雲行きが怪しい」と懸念する。

 その他大手も軒並み売り上げを落とした。そごう・西武は美術品など高額雑貨が前年並みを確保したが、訪日客数が5割減り、百貨店全体の売上高は6.5%減だった。

 関西を地盤とする阪急阪神百貨店は、既存店売上高が前年同月比14%減。特に免税売上高は化粧品など消耗品の落ち込みが激しく、68%減と低迷した。国内客の売上高も、子連れのファミリーや、60歳代以上の高齢者の来店控えが響き、8%減ったとしている。

 三越伊勢丹ホールディングスは、国内百貨店の既存店売上高が13.6%減で、免税売上高は旗艦店で6割超減った。1月31日に2020年3月期の連結純利益を140億円から70億円に引き下げた際には、「一定程度、新型コロナの影響を織り込んだ」(広報)。

 高島屋は暖冬による衣料品の苦戦もあり、2月の売上高は11.7%減、免税売上高は69.9%減だった。大手5社ともに、3月の営業時間を短縮したり、一部休業日を増やしたりと感染拡大の防止措置をとっており、影響が長引けばさらなるダメージは避けられない。

 新型コロナウイルスがなくとも百貨店は苦境にある。日本銀行の大規模な金融緩和で円安株高が進み、富裕層の高額消費や、訪日客による免税売上高が百貨店の業績を下支えしてきたが、19年は訪日客増加の勢いが鈍化。日本百貨店協会によると、百貨店全体の免税売上高は前年比2.1%増の3461億円と3年連続で過去最高を更新したものの、購買客数は前年比1.7%減の514万人と11年以来、8年ぶりに前年実績を下回った。

 円高により日本のお買い得感が薄れる可能性もあり、「これからも同じような伸びは期待できない」(百貨店関係者)。コロナショックで株価も急落しており、国内富裕層の買い控えも起きそうだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大以前から、地方百貨店の閉鎖が進み、大手アパレルがリストラを迫られるなど百貨店を取り巻く課題は表出していた。百貨店にとってこの春は踏ん張りどころになりそうだ。

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