米EV(電気自動車)メーカーのテスラは2月28日、全ての販売をオンライン経由に変更すると発表した。今は米国だけで約100カ所に販売店を置いているが、その多くを数ヶ月以内に閉鎖する見通し。資金繰りが苦しい中での苦肉の策ではあるが、次世代のクルマ販売のあり方を提示している面もありそうだ。

 テスラは同日、量産型セダン「モデル3」で廉価モデルを発売すると発表した。販売価格は3万5000ドル(約390万円)から。最安値モデルの最高速度は時速130マイル(209キロ)、航続距離は220マイル。1つ上の3万7000ドルモデルの最高速度は時速140マイル、航続距離は240マイルになるという。

テスラはすべての販売をオンライン経由に変更する(写真:AP/アフロ)
テスラはすべての販売をオンライン経由に変更する(写真:AP/アフロ)

 同社は公式ブログで「これらの価格帯を達成するため」と前置きし、販売手法の変更について併記した。一部の交通量の多い場所にある店舗はギャラリーやショーケースなどとして残すが、多くは今後数カ月以内に閉鎖する。販売店の閉鎖などのコスト改善により、自動車の価格を平均6%ほど下げることができるのだという。

 新車の販売といえば、販売店を介すのがこれまでの常識だ。販売店はアフターサービスや車検、修理などの業務もこなし、収益を確保する。自動車メーカーにとっては、販売店は顧客を囲い込む重要なタッチポイントだ。

 ただ、テスラの場合、販売店といっても、ショッピングモール内に設けた小規模店が多かった。実際の販売手続きはオンライン経由。これまでも業界の常識を覆す販売手法を採っていた。

 そうした販売モデルを作れたのは、テスラのEVはネットにつながる機能を備えているからだ。自動運転機能などのソフトは遠隔でアップデート。クルマに備えたカメラは道路状況などを常に記録し、これらの情報を基にテスラはより便利な機能や地図の充実などを実現している。

 2017年に大型ハリケーン「イルマ」が米南部を襲った際には、テスラはハリケーンの進路にあった車両のバッテリー容量を無線ネットワークを使って無料で増量した。航続距離を延ばすことで、ハリケーンの進路から逃れやすいようにドライバーを手助けしたのだ。万が一の充電切れに備え、急速充電機を置いた販売店を設置する、といった発想はテスラにはない。

 オンライン販売では引き渡しから7日以内か1000マイル以下の走行であれば、無料で返却することができる。ちょうど、通販サイトの「ゾゾタウン」と同じような仕組みだ。テスラは「車を購入して週末の友人との旅行で数百マイル走っても(満足できなければ)無料で返却できる」とする一方で「顧客がテスラを持ち続けたいと思うと確信している」と自信を示す。

 テスラはこれまでも、地図が見やすい縦長の大型モニターを車内に設置するなど、クルマに新たな風を吹き込んできた。「量産モデルの投入で増えていく受注をネットでうまくさばけるか、お手並み拝見だ」とモータージャーナリストは話す。とはいえ、クルマの「コネクテッド」化は今後、確実に広がっていく。テスラのチャレンジは、日本の自動車メーカーにとっても参考になるはずだ。

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