新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスク不足が問題になる中、「買い占め」問題はトイレットペーパーやティッシュなどの紙製品にも広がってきた。商品を求めて販売店に殺到するさまは、オイルショックを想起させる。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクを求めてドラッグストア前で列を成す消費者。品不足はトイレットペーパーなど紙製品にも(写真:アフロ)

 2月28日の午前10時、東京都三鷹市にあるホームセンターでは、列を成す客が開店と同時に店になだれ込んだ。目指すは2階の家庭用品コーナー。積まれたトイレットペーパーやティッシュを次々と手にしては、満足げにレジに並んだ。

 近隣に住む70代の男性は、「息子夫婦からトイレットペーパーがなくなるかもしれない」と聞いて不安になり、18ロール入りを2つと、5箱入りティッシュを2つ購入した。家では妻と2人暮らし。「息子夫婦にも分けられるようにね」と喜々として話した。

 30代の女性は、対話アプリのLINEでママ友が「オムツがなくなる」と書き込んでいるのを見て、慌てて買い求めに来たという。みんながティッシュやトイレットペーパーを買う姿を見て、「何となく私も買っちゃいました」。

 近くのドラッグストアでも同じような光景が見られた。棚には既に品はなく、店員がバックヤードからトイレットペーパーの入った段ボール箱を持ってくるなり、客が群がって争奪戦を繰り広げる。

 通路には空になった段ボール箱が無造作に置かれていた。男性店員は「昨日あたりから紙製品を買い求める客が急に増えた。『買い占め』の波はマスクや消毒液にとどまらなさそう」と半ばあきれ顔で話す。

 ツイッターでは“トイレットペーパー”や“生理用品”がトレンドワードの上位にランクイン。つぶやきを見た人が店に買いに走る悪循環が発生した。

 トイレットペーパーやティッシュの買い占めは、2月上旬に香港でも発生している。日用品が品薄になっているとの噂が市民の間で広がり、強盗事件も発生するまでに至った。中国本土との境界の一部を閉鎖するなどの措置を取ったため、生活用品が手に入らなくなるとの懸念が出たようだ。

 一方、日本の場合、トイレットペーパーなどの家庭紙は輸入依存度が低く、国内生産が中心だ。マスクの増産でティッシュなどの原料が足りなくなるのでは、という憶測がネット上で拡散。これが冒頭で見たような紙製品を買い占める客の増加につながったようだ。メーカーが加盟する日本家庭紙工業会によると、トイレットペーパーやティッシュの国内生産ラインは通常通り稼働しており、「供給には何ら問題ないのに」と困惑する。

 2011年の東日本大震災の直後にも発生した「買い占め」問題。ツイッターやLINEといったネットサービスはオイルショックを経験した年配層にも浸透しており、品不足への不安感から買い占めに走らせているようだ。

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