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 伊藤忠商事は2月28日、TOB(株式公開買い付け)を実施中のデサントと水面下で続けていた話し合いを打ち切ると発表した。TOB後の経営体制を巡り、伊藤忠はデサントに出す取締役の数を減らすなど和解案を示したが、デサントは明確な態度を示せなかった。むしろ、話し合いが両社の溝を深めてしまったようだ。

デサントの申し入れを受け、話し合いに応じたことを明かした伊藤忠商事(写真=ロイター/アフロ)

 伊藤忠は1月末にデサント株を現在の3割保有から4割保有に高めるためにTOBを始めると発表、デサントが反対表明し、日本では異例の敵対的TOBに発展していた。だが、日経ビジネス電子版が2月19日に報じた通り(「スクープ 伊藤忠が和解案、デサントへの敵対的TOBで」、元デサント社長の仲介で両者は和解に向けた話し合いを水面下で進めてきた。28日の伊藤忠の発表文でも「TOB開始後、デサントの申し入れを受け、デサントの意向を尊重する形で、TOB後のデサントの経営体制などに関する話し合いに応じた」と説明している。

 伊藤忠はTOB開始時に、デサントの取締役会の構成を伊藤忠、デサント、社外がそれぞれ2人ずつと提案していたが、デサント側に伊藤忠が出す取締役を1人に減らすなどした妥協案を新たに提示。デサントも石本雅敏社長を中心に受け入れが可能かどうかを模索していた。

 もともとデサント社内ではこれまでの伊藤忠のやり方が強引だと不満を持っている社員は多く、敵対的TOBに発展したことで、伊藤忠への反発も強まっていた。労働組合やOB会が伊藤忠のTOBへの反対を相次ぎ表明。石本社長が和解に向けて社内をまとめることは困難だったもようで、話し合いはなかなか前に進まなかった。

 デサントが妥協案を受け入れるか否かの期限は2月末だったとみられ、伊藤忠は28日の発表によって、明確な態度を示せなかったデサントに見切りをつけたことになる。

 伊藤忠の発表文では6月の定時株主総会を待たずに「臨時株主総会の招集を請求することを検討する可能性がある」とも言及した。できるだけ早く、デサントの経営陣を刷新したいという意向がにじむ。伊藤忠の28日の発表に対し、デサント社内では、伊藤忠に徹底的に対抗しようとする声も出ている。

 誰の得にもならない対立構図をなんとか話し合いで収束させようという両社の試みは、皮肉にも一段と溝が深まる結果に終わってしまった。

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