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 「ふるさと納税」制度を取り巻く状況が大きく変わっている。

 「一定範囲であれば、寄付金(自己負担2000円を除く)は税控除」かつ「返礼品をもらえる」という納税者がほぼ損をしない仕組みは、2017年度で総額3653億円というカネの争奪戦を生んだ。本誌記事「泉佐野の100億円還元に「許せない」、地方同士の戦いへ」でも、税収が流出する「都市部」vs「地方」、行き過ぎた返礼品を批判する「総務省」vs「地方」の論戦から、さらには「地方vs地方」で批判の応酬が交わされる事態にまで発展している現状を報じた。

 地方創生。これがふるさと納税の大義名分だ。域外居住者などから寄付金が集まるのだから、財政の悪化する自治体にとっては渡りに船だろう。だが、見落とされがちだが、地方活性化の効能はそれだけではない。

 多くの場合、自治体は返礼品を寄付者に発送する。その返礼品の製造や発送を担うのは、これもやはり多くの場合、寄付を受けた自治体の域内業者だ。寄付金に対する返礼品の価格を3割以内とせよというのが総務省の方針なので、仮にこれを全自治体が厳密に守ったとすると、2017年度をベースに計算して1000億円近い「発注」が自治体から主に地場業者になされたことになる。実際には3割の指針は守られていないし、2018年度のふるさと納税総額は2017年度のそれを上回る可能性が高いので、これ以上の発注があったと考えてよいだろう。

 地場業者の業績が好転すれば、その下請けなどへも波及効果が発生する。税収の向上も見込めるかもしれない。九州地方のある製造業者は明かす。「ふるさと納税のインパクトはすごい。(返礼品に)指定されてから売り上げが2倍になった」。

 寄付金が集まって地場産業も潤うとは「いいことずくめ」のように見えるが、本当にそうなのか――。

 上記業者はこう続ける。「宣伝は市がやってくれるので、発注に応えて作ればいいだけだが手が回らない。生産設備の増強を検討している」。

 この“他人任せ”に危機が潜んでいる。

新手の「無責任な公共事業」に

 返礼品を選定する裁量は自治体に委ねられている。企画を公募したり、競争させる仕組みを導入していたりする自治体も少なくないが、公共工事の公募入札のように厳密に要件を決められる類のものではない。いきおい価格や品質ではなく「どんな商品やサービスが寄付金を集めそうか」という「目利き」の力が問われることになるが、流通企業が営々と育成しているバイヤーやマーチャンダイザーなどの機能を持たない自治体にそれはほぼ期待できない。

 結果として、応募する企業は、消費者(寄付者)ではなく自治体の担当者に選ばれることを意識するようになる。

 もちろん魅力のない商品には寄付金が集まらない。結果として淘汰されるというメカニズムも働きそうなものだが、「一定範囲であれば、寄付金(自己負担2000円を除く)は税控除」という仕組み上、正しい「価格」というものが消費者(寄付者)に意識されにくい。表示上は「1万円」でも、申し込むときには「価値のほどはわからないけど、税金で収めるよりはマシだから」などと考えることになるからだ。

 一般に、消費者は「価格」と「価値」を比べて商品やサービスを選択する。価格が不明瞭なところに、正しい市場メカニズムは働かない。上記と別の業者もこう明かす。「(ふるさと納税の返礼品ではない)独自ルートの通販の方がお客様の評価が厳しい」。裏を返せば、「どうせ自己負担がほとんどないので」と、商品やサービスの質を評価する視線が甘くなる消費者(寄付者)が少なからずいる、ということだ。