ドローンなどを開発するスタートアップのA.L.I.Technologies(東京・港、以下A.L.I.)は3月にも、クラウド経由で演算能力を貸し出す「パワープール事業」を始める。多数のGPU(画像処理半導体)を束ね、「自動車設計の際のレンダリングやディープラーニングなど、大量のマシンパワーが必要な企業に売り込んでいく」と、加来武宜経営企画本部長は意気込む。

 仕組みは米アマゾン・ドット・コムが提供するAWS(Amazon Web Services)などのクラウドサービスと似ているが、A.L.I.は仮想通貨の“墓場”を活用するのが特徴だ。仮想通貨価格が大幅に下落したことで、稼働停止状態の「マイニング装置」があまり始めていることにA.L.I.は着目した。

 ビットコインなどの仮想通貨を得るには「採掘(マイニング)」という作業が欠かせない。「マイナー」と呼ばれる採掘事業者はデータセンターに大量の装置を構え、装置稼働や冷却のために膨大な電気代を使って24時間計算を続けてきた。しかし、仮想通貨の価格下落によって採算が合わなくなったのだ。

むき出しのサーバーが棚に並ぶ、仮想通貨のマイニング施設。システムの安定稼働よりも省エネが優先される(写真:shutterstock )
むき出しのサーバーが棚に並ぶ、仮想通貨のマイニング施設。システムの安定稼働よりも省エネが優先される(写真:shutterstock )

 日本も例外ではない。GMOインターネットが18年12月期、マイニング関連で約355億円の特別損失を計上。DMM.com(東京・港)も18年2月に金沢市にマイニング施設を建設して参入したが、12月に撤退を表明した。

 マイナーが撤退する場合、装置の取り扱いはどうなるか。マイニング装置の販売を手掛けるアユート(東京・文京)によると、「GPUやメモリーなどは再利用できるので、中古品として売却するのが一般的」という。

 一方で、「マイニング装置の投資回収もできておらず、電力供給や土地の賃貸を長期で契約しており、すぐには止められない」(ある事業者)という事情を抱えるマイナーも多く、簡単に撤退できない面もある。掘っても赤字だが、掘らないよりはマシと、しかたなくマイニングを続けている事業者もいる。

 そんな仮想通貨の墓場とも言える多くのマイニング装置を、別用途で安く活用しようとするのがA.L.I.のサービスだ。同社の加来氏は、「借りる方は高価なマシンを安く使え、貸し出す方はマイニング事業を続けるよりも採算が合う仕組みにしている」という。現在は複数の事業者と条件面で交渉中だ。

 こうしたサービスが広がれば、レンダリングなどのマシン費用が下がる可能性もある。仮想通貨ブームの終焉は他分野の成長のきっかけになるかもしれない。

■変更履歴
本文中に「加来武宣経営企画本部長」とありましたが、正しくは「加来武宜経営企画本部長」でした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです 。[2019/2/25]

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