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 ホンダは19日、英南部スウィンドン工場での四輪車生産を2021年中に終了すると発表した。同工場は北米向けの輸出車両の生産量が全体の半分強を占めており、今後は北米向け車両については現地拠点での生産に切り替える。欧州連合(EU)向けの車両については、将来のゼロ関税が見込まれる日本や、生産基盤のある中国から送り込む。

3500人の従業員を解雇する見通し(写真:SWNS/アフロ)

 「今度はホンダか」。18日、英メディアがホンダの工場閉鎖のニュースを流すと、同国の政財界は騒然とした。今月3日には日産自動車がSUV(多目的スポーツ車)「エクストレイル」の次期モデルの生産を英国から日本に切り替えると発表したばかり。今回は3500人の雇用が失われる可能性もあり、衝撃は大きい。

 そんな英国民の感情を察してか、19日に会見した八郷隆弘社長は「生産配置の適正化」の一環だと強調、英国のEU離脱の影響は「考慮していない」と繰り返した。

ホンダの八郷隆弘社長は会見で「生産配置の適正化」が目的と強調した

 だが、額面通りに受け取る向きは少ない。SBI証券の遠藤功治・企業調査部長がまず、指摘するのは日本とEUの関税を段階的に撤廃するEPA(経済連携協定)の発効。「2月1日にEPAが発効したことで、そもそもEUで売る車を英国から出す意味はなくなった。そこに合意なきEU離脱のリスクが高まった。もともと低稼働の英工場を持つ必要性が薄れていた」とみる。

 ホンダの欧州で唯一の四輪車工場であるスウィンドン工場は1992年に生産を開始。2001年には生産能力を年25万台まで増強したが、英国やEU内で販売は思うように伸びず、18年の生産実績は約16万台。うちEU27カ国への販売は3万2000台にとどまった。北米向け車両が、工場を支えていたのが実情だ。

 スウィンドン工場で生産を止めた後は、英国やEU向けの車両は日本や中国で生産する。日本の場合、EPAにより、自動車関税が今後7年かけて段階的に減り、8年目にはゼロとなる方向だ。輸送にかかるコストを考慮しても、EU域内で新工場を一から立ち上げるより負担は軽いと判断したようだ。

日本や米国など先進国の製造業では、自国の製造インフラの強みを再評価して、国内に生産機能を戻す動きが広がりつつある。ホンダの英生産撤退は、「地産地消」を基本としてきた自動車業界でも、複雑さを増す地政学的リスクを背景に、国内回帰を進め始めたことを示している。

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