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 日本でも新型コロナウイルスの市中感染の可能性が高まり、感染者数は連日増えている。日本政府はこれまで水際対策の強化によって新型コロナウイルスを食い止めようとしてきたが、それが突破されたことが明らかになった今、局面は国内の感染拡大をいかに防止していくかに移ったと言える。

 日本において政府や自治体が頭を悩ませているのが、感染者が発見されたことを発表する際に、プライバシーに関わる情報をどこまで尊重すべきかだろう。法を守り人権を尊重することと、有効な疫病対策は時に相反する。本来は有事における関係法規を事前に整備しておく必要があったが、すでに事態が進行中である以上、法の範囲内でできる最大限の対策をしていくほかない。

 共産党が一党独裁体制を維持している中国は、人権やプライバシー、法治について日本とは異なる考え方を持っている。湖北省武漢市の封鎖をはじめとして、各地での大規模な移動制限や企業活動の再開延期を通達できたのはそのためだ。最近では一部都市で戦時管制を敷いたり、私有財産を接収できるとの緊急立法まで行われたりした(関連記事: 戦時管制に財産接収可、新型コロナウイルスで「禁じ手」繰り出す中国)。

(写真:ユニフォトプレス)

 ただし、このような体制だからこそ、疫病対策に「純粋」に向き合える面があるのも事実だ。デジタル技術の浸透と相まって日本では考えられない感染者情報の把握と公開がなされている。政治体制の違いがあるとはいえ、新型コロナウイルスの脅威に真っ先に直面した中国の取り組みは、現在の日本にとって参考になる点があるかもしれない。

 まず中国国務院(政府)が提供しているネットサービスを紹介したい。SNSの微信(ウィーチャット)内で起動できるソフト「小程序(ミニプログラム)」を使用している。同サービスにウィーチャット経由でログインすると、自分が列車や飛行機で感染者と接触があったかを検索できる。その結果、自分の感染リスクが表示されるという仕組みだ。

飛行機や高速鉄道の同乗者に感染者がいなかったことから「安全」と表示されている