関西電力の通信子会社ケイ・オプティコムは2月18日、東京都内で格安スマートフォン(スマホ)事業「mineo(マイネオ)」の事業戦略説明会を開催した。登壇した上田晃穂モバイル事業戦略グループグループマネージャーは「他社との競争をファンとの『共創』で勝ち抜く」と宣言。3月1日から導入するサービス強化策の軸と掲げたのが「アンバサダー制度」だ。

一般にアンバサダーとは周囲に対し、企業やブランドを自ら率先して推奨してくれるような熱烈なファンのことを指す。こうしたファンを組織化してサービス内容の拡充につなげるのが、ケイ・オプティコムの作戦だ。具体的にはアンバサダーに口コミ発信を促すほか、アンバサダーとスマホ初心者をビデオチャットでつなぎ、初期設定方法などをアドバイスしてもらう仕組みを設ける。
さらに、ケイ・オプティコムが認めた一部のアンバサダーにマイネオの先々の事業方針などを共有し、新サービスを共同で検討する制度も用意する。ケイ・オプティコムはこれまでも、ユーザー同士やマイネオ運営側とユーザーのつながりを強化して顧客を囲い込んできた。ユーザー交流サイト「マイネ王」やオフ会の「ファンの集い」には熱心なユーザーが集まる。
今回のアンバサダー制度もその延長線上に位置づけられるが、事業方針などの重要情報を一般公開する前に提供するのは情報漏洩リスクが伴う。にもかかわらず、ケイ・オプティコムはなぜこんな作戦に出たのか。
大きな理由は、ソフトバンクの「ワイモバイル」やKDDIの「UQモバイル」などのサブブランドに、独立系の格安スマホ陣営が苦戦を強いられていることだ。ワイモバイルの契約数は既に400万件を突破した。UQモバイルも大量のテレビ広告などを投じるなどしてシェアを急拡大させている。
一方のケイ・オプティコムは足元で113万件と水をあけられている。さらに「今後は先の見えない体力勝負に突入する」(ケイ・オプティコムの上田氏)との危機感もある。携帯最大手のNTTドコモが19年4~6月に携帯料金を引き下げる方針を打ち出しており、楽天の携帯事業新規参入も19年10月に控えている。
大手がなりふり構わず強める、格安スマホへの包囲網。熱烈ファンの力を借りる今回の戦略は、体力に劣る独立系の格安スマホ勢による苦肉の策か。それとも生き残りにつながる一手になるのだろうか。
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