新型コロナウイルスの影響で、国内のアルコール消毒液の需給がひっ迫している。ドラッグストアなどでは「在庫はゼロ。入荷しても数時間で売り切れる状況」(都内のチェーン店)で、消毒液メーカーは一斉に増産に舵(かじ)を切っているが、生産が需要に追いついていない。大手4社に現状を聞いた。

 厚生労働省は2月6日、公式ツイッターを使ってアルコール消毒について異例の注意喚起を実施した。

 ネット上で「新型コロナウイルスに対し、アルコール消毒には予防効果がない」とする情報が出回っていたことを受けてのもので、「誤った情報です。厚生労働省では咳エチケットや手洗い、うがいなどと並んで『アルコール消毒』を行なっていただくよう、国民の皆さまにお願いしています」とツイート。先の都内チェーン店の担当者は「厚労省からのお墨付きの影響か、2月上旬からさらに問い合わせが増えるようになった」と話す。

 消費者向けの手指アルコール消毒剤は、大手数社で国内シェアの約8割を占める。トップシェアは「手ピカジェル」などを生産する健栄製薬だ。シェアは5割に達するとされる。

 1月下旬、健栄製薬の松阪工場で休日返上の増産が始まった。稼働時間が「通常時の倍」という異常事態。土日や祝日も稼働し続ける対応で、「キャパシティーの限界まで増産している」と同社の担当者は言う。

 そもそも1月はインフルエンザなどの流行期で増産する傾向にあるが、1月中旬以降に卸売業者からの問い合わせが殺到。現在、受注は通常時の10倍以上に達している。「フル稼働していても全ての注文に応えられていない状況だ」(同社)

 健栄製薬の工場では、原料メーカーから調達したアルコールに水やヒアルロン酸などを混ぜ、それをジェル状に加工するという工程を踏んでいる。「原材料の確保が難しいという話は出ていない。単純に当社の生産キャパシティーの問題だ」とするものの、今後の設備増強については「ノーコメント」としている。

 健栄製薬に続くシェアを持つとされるのが日用品大手の花王、ライオン、サラヤだ。

 「ビオレu 手指の消毒液」などを生産する花王も、既に増産に踏み切っている。「いつまでこの状況が続くか分からないので、今後の増産体制に対してはコメントする段階にない」(花王広報)としている。

 「キレイキレイ 薬用ハンドジェル」が1月の出荷ベースで前年同月比1.5倍になったライオン。在庫がひっ迫してきたことを受けて、2月下旬からの増産を決めた。健栄製薬や花王と同じく、設備の拡充については「まだ決まったことはない」(ライオン広報)としている。

 サラヤは2月6日、電話での問い合わせが殺到したことを受けて、取引先に対してオンラインでの発注を促す文章を配布した。国内での感染者が発生した1月下旬以降に問い合わせが増加し、現在でも生産や在庫をはるかに上回る発注があるという。健栄製薬や花王と同様、サラヤも既に、操業時間の延長や増員による増産に踏み切っている。

 各社は今後の需要が読めない中、現有の設備での増産にとどまっているのが現状だ。今後は設備増強に踏み切るかどうかが焦点になるが、あるメーカーの担当者は「消毒液の容器を中国で作っているケースもあり、単にラインを増やしても、今度は材料がボトルネックになる恐れもある。慎重に判断したい」としている。需給ひっ迫はしばらく続くと見たほうが良さそうだ。

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