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 2月15日に「スクープ 積水ハウス・和田前会長、復権求め株主提案」で報じた通り、積水ハウスの和田勇・前会長が2月17日、都内で記者会見を開き、自身を含む11人の取締役候補の選任を求める株主提案を会社側に提出したことを明らかにした。目指すのは、和田氏を解任した阿部俊則会長ら現経営陣の追放。なぜ、話はこじれたのか。黒塗りの調査報告書がカギを握っている。

黒塗りの調査報告書には何が書かれていたのか
  

 2月17日16時に始まった緊急記者会見。和田氏は「透明性のあるガバナンス(企業統治)体制をつくるのが最大の目的」と今回、行動を起こした狙いを語った。

 阿部会長ら現経営陣はコンプライアンス(法令順守)に問題があるため取締役に値しない、ついては和田氏を含む11人が新たに取締役として就任する、というのがその言い分だ。

 そもそものきっかけは、東京都品川区のマンション用地取得で会社がだまされ、55億円の損失計上を迫られた地面師事件。2018年の1月、事件の責任が当時の阿部社長にあるとして会長だった和田氏が阿部社長の解任動議を出したところ、逆に阿部社長に和田会長の解任動議を出される返り討ちに遭い、和田氏がその座を追われた。

 和田氏が今回、反撃に出た根拠とするのが事件の「調査報告書」だ。積水ハウスの社外取締役らからなる調査対策委員会がまとめたこの報告書には、業務執行責任の最高位者であった当時の阿部社長について「取引の全体像を把握せず、重大なリスクを認識できなかったことは、経営上、重い責任がある」と記述してある。そしてこの調査報告書を受けて開かれた人事・報酬諮問委員会では、責任をとるため阿部氏らの退任が妥当とされたのに、阿部氏は逆に和田氏を追放。自らが続投するため不都合な調査報告書を開示せず隠蔽しているというのが和田氏の主張だ。

 確かにこの調査報告書、会社からは公表されていない。しかし会社がかたくなに公表を拒むこの調査報告書、実はあるところで見ることができる。

 「Save Sekisui House」。こんなサイトが昨年、米国で突如立ち上がった。ウェブサイトの目的を見ると「積水ハウスの株主、従業員、あるいは積水ハウスを含む日本企業及びその他アジア企業のコーポレート・ガバナンスの向上・改善に関心のある方々からの情報提供を歓迎いたします」とある。そして「積水ハウスの一部取締役に対する地面師事件及びその後の情報隠ぺいの責任を追及する株主代表訴訟に関して、情報を随時更新しております」とも記してある。

「Save Sekisui House」のホームページ画面
  

 一部個人名などは個人情報保護の観点から黒塗りになっているが、このサイトに調査報告書が掲載されているのだ。「和田陣営の仕業だ」。会社側は昨年のうちにこのサイトの存在を確認、何か仕掛けてくるのでは、と警戒を強めていた。

 なぜ米国なのか。今回、和田氏が求めた11人の取締役候補のうち、2人は外国人だ。クリストファー・ダグラス・ブレイディ氏は米投資銀行業務のチャート・ナショナルのトップ。もう一人のパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏は米スパウティング・ロック・アセット・マネジメントのESG(環境・社会・企業統治)投資の専門家だ。こうした投資家の支援も取り付け、和田氏が米国から反撃を開始したと会社側は分析している。

 今回、調査報告書が白日の下にさらされたことで阿部会長は苦しい立場に追い込まれる可能性がある。一般株主からも非難の声が上がるのは容易に想像できるからだ。和田氏を追放した直後、18年4月の株主総会で阿部氏の取締役選任議案の賛成比率は69%しかなかった。今年の株主総会では今回の和田氏の反撃もあり、さらなる苦戦が待ち受けているかもしれない。

 だがこの調査報告書、阿部氏の責任に触れた部分の後に、こうも記されている。「代表取締役会長(和田氏のこと)も、このような事態が発生したことに責任がある」。両者の攻防の行く末はどうなるのか。地面師事件の総括が必要なことだけは確かだろう。

  
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