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 米国で「最恐」と名高いアクティビスト(物言う株主)のエリオット・マネジメントに、孫正義氏はどう対峙していくのか──。

 ソフトバンクグループ(SBG)の2019年4~12月期決算の発表会見において、開催前から投資家らの大きな関心を集めていたのがこの点だ。エリオットはSBG株の発行済み株式数の約3%を保有しているとみられ、最近になって巨額の自社株買いや社外取締役の増員、SBG傘下の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の情報開示を要請しているとされる。

(写真:つのだよしお/アフロ)

 「僕自身がエリオットの経営陣と直接会ったのは10日か2週間ぐらい前。忌憚(きたん)なく、いろんな話をじっくりとさせていただいた」。決算説明会で、孫氏はエリオット側と話し合いの場を持ったことを明かした。その一方で「物言う株主も、物を言わない株主も、大事なパートナーである」と、エリオットの一連のアクションを特別視しないとも受け取れる「余裕」を見せた。

 孫氏のこうした自信には裏付けがある。エリオットが投じた約25億ドル(約2700億円)は、1社に対する投資額としては最大だが、SBG株の持ち株比率に換算すると3%強。強硬的な手法で数々の企業を震え上がらせて来たエリオットも、この比率では通用しなさそうだ。

 孫正義氏がSBG株の約22%を保有する上、個人投資家の持ち株比率も高い。ここ10年で6倍になった株価の恩恵を受けている個人も少なくないため「毎年の株主総会の様子は孫さんのファンクラブも同然」(個人投資家)。孫氏への信頼は絶大だ。経営方針を巡り、他の株主の委任状争奪戦を仕掛けたとしても、こうした株主構成が、全体の3分の2の賛成票を得るのを難しくしているといえよう。

 エリオットもその辺の事情をよく理解しているからこそ、約25兆円の価値を持つ保有株式の中で大きな含み益を持つ中国のアリババ集団や英アーム・ホールディングスの持ち分を縮小して株主に分配しろと要求するのではなく、自社株買いという比較的ハードルの低い手段を提示したと考えられる。12日の説明会で孫氏は、自社株買いに応じるかについて具体的な言及を避けたが、「孫さんは恐らく対応するのではないか。ゼロ回答はないだろう」(国内系証券アナリスト)と見るSBGウオッチャーは多い。

 ウィワーク騒動を機に、6000円近くあったSBGの株価は4000円台まで下落した。明らかに割安な水準と見てエリオットは動いたのだろう。「昨年6000億円の自社株買いを実施した際、株価は約20%上昇した。今回も同程度の効果が上げられれば、(エリオットは)手を引くのではないか」(外資系証券幹部)と、「短いお付き合い」前提の行動だとみる向きもある。

 決算説明会では本心を明らかにしなかった孫氏。しかし、頭の中では着々と決着に向けたシナリオが描かれているに違いない。

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