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 シャボン玉のような潜水装置に乗り込み、海中を自由に散歩する――。2021年にも、こんなユニークな観光サービスが登場する。オーシャンスパイラル(東京・港)が開発する「海中バルーン」だ。同社は2月13日、大和ハウスグループで商業施設やホテルのデザインを手掛けるデザインアーク(大阪市)などと提携すると発表した。

海中バルーンのイメージ。直径3mのアクリル球体をワイヤーで吊り下げ、沈没船や魚群を観察できる
母船となる「サポートベッセル」のイメージ

 バルーンの正体は、直径およそ3mのアクリル製球体。母船となる「サポートベッセル」からワイヤーで吊り下げ、海中を上下左右360度見渡しながら移動できる。アクリルの厚みは約7cmで水深100mまで潜水可能だ。特殊な訓練や酸素ボンベなどの装備は必要ない。最大5人まで搭乗でき、バルーン内を自由に動き回れる。「新婚旅行のカップルだけでなく、小さな子どもをつれた家族でも手軽に海中観光を楽しめるようにしたい」と、オーシャンスパイラルの米澤徹哉社長は意気込む。

 小型潜水艇の製造で実績がある米トライトンなどと提携し、デザインや安全性の検証に取り組んできた。設計はすでに終わっており、4月末には模型が完成するという。今年夏から実機の建造に着手する方針だ。

米トライトンが開発する潜水艇。アクリルを用いて球体のコックピットを製造できる企業は限られているという

2023年には日本でもサービス開始

 「NHKが世界で初めて生きているダイオウイカの撮影に成功した時、使っていたのがトライトンの機材だった。様々な現場で培った技術を海中バルーンに注ぎ込む」(米澤社長)。万が一に備え、バルーン内に4日分の酸素を搭載。底部のバラストを切り離せば即座に浮上できるシステムなど、様々な安全装備を用意する。

 「世界各地のダイビングスポットで展開し、1人当たり5万円程度で乗れるようにしたい」と米澤社長。既にマレーシアやモルディブ、タヒチなどから引き合いがあるという。20年中に実機の試験運用を始め、21年から商用サービスに乗り出す方針。23年には日本へのサービス導入を目指す計画だ。

 深海の大部分は今なお神秘のベールにつつまれている。これまでに12人が月面を歩いたが、チャレンジャー海淵の最深部に到達したのは3人だけだ。「民間参入によって宇宙開発のコストが劇的に下がったように、海洋調査のハードルを下げていきたい」と米澤社長は話す。

 中国のスタートアップが相次ぎ「水中ドローン」を発売するなど、潜水航行できる機器の開発競争は激しさを増している(水中ドローンが増殖、CESで感じた中国企業の強さ)。透明なバルーンから見える海中の風景は、人類の新たな冒険心をかきたてるきっかけになるかもしれない。

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