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 「厳しい冬の後には春が来る。潮目が変わった」

 2月12日夕刻、ソフトバンクグループ(SBG)が東京都内で開催した2019年4~12月期の決算会見。孫正義会長兼社長はさばさばした表情でこう語った。米携帯電話4位で業績不振が続く子会社スプリントと同3位のTモバイルUSによる合併構想が、一段と実現に近づいたことに対する発言だ。

スプリントとTモバイルUSの合併による米国市場のメリットをアピールするソフトバンクグループの孫正義会長兼社長

 2社の合併を巡ってはニューヨーク州などの米自治体が中止を求めて訴訟を起こしていたが、2月11日(現地時間)、米ニューヨークの連邦地裁が訴えを棄却した。これを受けてスプリントとTモバイルUSの経営幹部は「大きな勝利だ」と表明。既に対米外国投資委員会(CFIUS)が18年12月、米国司法省(DOJ)が19年7月、米連邦通信委員会(FCC)も同年11月に条件付きで合併を認めている。このほか19州の公益事業委員会(PUC)からの承認も別途必要だったが、こちらも残すはカリフォルニア州のみという。スプリントとTモバイルUSは20年4月1日にも合併の手続きを完了させたい考えだ。

 SBGの孫氏がおよそ2兆円の資金を投じ、13年にスプリントを買収した時から狙っていたというTモバイルUSの買収・合併構想。成就すれば契約者数で米国シェア首位のベライゾン・コミュニケーションズと2位のAT&Tに迫る第3極が誕生し、競争が促進されて米国民の利益になる──。孫氏はそんな大義名分を掲げて合併に執念を燃やしていた。

 だが、この計画は孫氏にとって誤算の連続だ。14年夏には「競争政策上、4社体制が必要」と見る米規制当局の強い反対にあって頓挫した。15年には格安の料金プランを武器に顧客を獲得するTモバイルUSに米市場シェアで抜かれて、スプリントは業界4位に転落してしまった。

 もっともスプリントの低迷は皮肉なことに、難航していた両社の合併が前進する一因になったともいえる。孫氏は14年の計画頓挫後も、TモバイルUSの親会社であるドイツテレコムと水面下で合併交渉を再開。17年11月には統合後の新会社の主導権にこだわって交渉を中止していたが、わずか5カ月後の18年4月には事実上、スプリントをドイツテレコムに売却し、米携帯市場から手を引く形での合併合意に至っている。具体的には合併後新会社に対する経営権を握るのはドイツテレコムで、新会社の41.7%の株式を握る。SBGの持ち株比率は27.4%となり、連結対象から外れて持ち分法適用会社となる。業界4位が定位置となったスプリントに対し、孫氏が経営権へのこだわりを捨てるという現実解を選んだというわけだ。

 スプリントの業績は現在も厳しいままだ。19年4~12月期の売上高は対前年同期比6.4%減の2兆6157億円、営業利益は同46%減の1378億800万円と減収減益だった。プリペイド式携帯電話事業の不振などが理由だ。「我々が(スプリントに)投資した額は約2兆円だが保有株式の価値は3兆2000億円。少なくとも、投資した額に対してそれなりに十分な利益を出している」と説明する孫氏。かつてスプリントは乾坤一擲で勝負をかけた“虎の子”の事業だったはずだが、今やSBGを「戦略的投資会社」と呼ぶ同氏にとっては、どんな事業も投資先の一つにすぎないのだろう。

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