国内携帯電話市場の一大商戦期となる3月に向け、携帯大手が傘下の格安スマホ会社を通じて販売攻勢を強めている。
ソフトバンク傘下の格安スマホ会社、LINEモバイルは2月10日、新たな料金プランを19日から導入すると発表した。料金はデータ通信容量や音声通話機能の有無で異なるが、例えば音声通話と最大3ギガバイトのデータ通信が可能な月額1480円(税別)のプランは「主要な格安スマホで最安」(LINEモバイル)とうたう。
新プランはいずれもメッセージアプリ「LINE」を利用する際には通信容量を消費しない。さらに月額280円または480円のオプション料金を支払えば、指定のSNS(交流サイト)や音楽配信サービスの利用時も同様にデータ通信容量を消費せずに済むようになる。

LINEモバイルが格安スマホ市場に参入したのは16年秋。国内7000万超(当時)のメッセージアプリ利用者を抱えるLINEの子会社として鳴り物入りでサービスを始めた。だが当時から日本の格安スマホはレッドオーシャン(激戦市場)で、LINEモバイルのシェアは低迷。18年にはソフトバンクに買収されてしまった。
もっとも、この買収でLINEモバイルは、端末値引きキャンペーンを頻繁に実施できるようになるなど浮上のきっかけをつかむ。同社は累計契約者数を公表していないが、10日開催した記者会見では、19年末時点では「前年同期比で165%増えた。成長率では業界ナンバーワンだと自負している」(今村隼人副社長)と明らかにした。
好調なのはLINEモバイルだけではない。KDDIが傘下の通信会社を通じて提供する「UQ mobile」も、大量のテレビ広告を投じるなどしてシェアを急拡大させており、20年1月には200万契約を突破した。さらに、ソフトバンクが“格安スマホ”として売り出しているが実際は自社で運営する「ワイモバイル」も、足元の契約数が500万に達している。
着々とシェアを拡大する携帯大手系の格安スマホサービス。ただ、市場全体の成長は鈍化している。調査会社のMM総研によると国内の格安スマホ回線数は19年9月末時点で1405万件。前年同期に比べ16.8%増にとどまった。年4~7割のペースで伸びていた過去数年の勢いはもはや見られない。
割を食っているのは「独立系」の格安スマホ会社が手掛けるサービスだ。例えば格安スマホ大手の一角であるインターネットイニシアティブ(IIJ)の場合、個人向けの「IIJmio」の契約数は19年12月末時点で107万2576契約と、同9月末時点から微減となった。同じく大手で関西電力の通信子会社オプテージの「マイネオ」(大阪市)は18年4月に100万契約を達成したが、20年1月時点で117万契約と伸び悩んでいる。
むろん両社とも手をこまねいているわけではなく、独自の料金やサービスで対抗しようとしている。オプテージは1月29日に新料金プラン「ゆずるね。」を発表。回線が特に混雑する時間帯でも全体の通信速度が低下しないよう、平日12~13時にスマホの利用を控えてもらった利用者に、様々な特典を提供するのが特徴だ。IIJも今春に新たな料金プランを提供すると表明している。
携帯大手から顧客を奪う形で一時は急成長した格安スマホ市場。だが資金力に勝る携帯大手がここでも勢力を広げたことで、「大手vs格安」を軸としていた競争環境はゆがんでしまった。大手と傘下の格安スマホ会社による包囲網が狭まる中、独立系の格安勢には生き残りを懸けた一手が必要になりそうだ。
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