JR北海道は2月12日、北海道で新たな観光列車を走らせることを発表した。赤字経営が続く中、豊かな観光資源を背景に経営回復を図りたい同社は、これまでも道内で観光列車を走らせ、観光客を招いてきた。ただ、今回発表した観光列車事業は、これまでとは戦略が大きく異なる。

 「身の丈にあった取り組みではある」。そう話したJR北海道の島田修社長がこの日発表したのは、他社の車両を使用した観光列車事業だ。2019年7~9月の土日と祝日は、JR東日本から陸羽東線、左沢線、石巻線などで運行する「びゅうコースター風っこ」を借り受け、宗谷線の旭川~音威子府、音威子府~稚内の間を走らせる。20年5~8月のうちの1カ月間は、東急電鉄の豪華観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」を借り、札幌~道東エリアで運行する。

JR東日本の「びゅうコースター風っこ」と車内(写真:JR東日本)
JR東日本の「びゅうコースター風っこ」と車内(写真:JR東日本)

 食事の提供もあるザ・ロイヤルエクスプレスでは、列車の運行はJR北海道が担うものの、車内サービスは東急側が担当する計画だ。人気が高まっている観光列車は全国各地で走っているが、他の鉄道会社から車両や人員を借りての事業は異例とも言える。

東急電鉄の「ザ・ロイヤルエクスプレス」と車内(写真:東急電鉄)
東急電鉄の「ザ・ロイヤルエクスプレス」と車内(写真:東急電鉄)

 JR北海道は、人口減少による利用者減に加え、事故や不祥事、さらには天災の被害もあって経営難に陥っている。18年3月期連結決算では営業赤字が416億円で過去最大となり、18年7月には国交相の監督命令で「インバウンド観光客を取り込む観光列車の充実」を経営改善に向けた取り組みの一つとして挙げられた。需要が高まっている観光列車の拡充は、その一手となるが、高額な建造費は負担できない。そこで車両を他社からレンタルするという策に出た。

 ただ具体的な賃貸費用や運営方式は「検討している部分が多い」(島田社長)としており、見通せていない部分も多い。島田社長自身も「今回の取り組みだけで経営が改善するとは思っていない」と話すように、新幹線や在来線を含めた乗車率の向上は依然として課題のままだ。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。