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 日産自動車は12日、2019年3月期の連結営業利益が18年3月期比22%減の4500億円になりそうだと発表した。従来計画の5400億円から900億円引き下げた。西川広人社長は「第3四半期までの計画達成率は6割を下回った。落ち込みを無理に補うと過去の過ちの繰り返しになるので残念ながら下方修正した」と話した。

 停滞をもたらしているのは世界2大市場である米中での苦戦だ。米国では高水準の販売奨励金による「値引き」販売が収束せず、中国では新車販売台数が1月までに5カ月連続で前年同月比マイナスとなっている。この2つは勾留中のカルロス・ゴーン氏の側近だったホセ・ムニョス元CPO(チーフ・パフォーマンス・オフィサー)が直近まで統括していた市場。長期戦略の欠如が尾を引いている。

米国では高水準のインセンティブが日産の収益を圧迫している(写真:AP/アフロ)

 4000ドル(44万円)以上――。18年4~12月期、日産が米国で1台クルマが売れるごとに販売店に拠出した奨励金の平均値だ。業界では「インセンティブ」と呼ばれ、販売店はこれを原資に顧客の値引き要請に対応する。市場全体では3700ドル程度だが、他の日本メーカーは多くて3000ドル強で、日産の突出ぶりが目立っている。

 米国では消費者の志向がSUV(スポーツ用多目的車)やピックアップトラックに移行。日本メーカーが得意としたセダンが売れなくなり、18年は各社ともインセンティブに頼った。ただ、トヨタ自動車は「カイゼンの成果が少しずつ出てきた」(白柳正義執行役員)。在庫が落ち着いたことなどで、出口は見えつつあるようだ。

 日産も販売奨励金を抑える取り組みを進めている。ただ、構造改革に加え、まずはブランド強化が必要になってくる。なぜ、日産は米国で計画性を失ったのか。

 「数値目標を達成することを求められ、目先の結果を優先してしまった」というのが複数の日産関係者の弁。求めたのはゴーン氏、それを受けたのが昨春まで米国統括を務めていたムニョス氏だった。

 西川社長は米国販売について「ブランドとしてのバリューが十分ではなく、インセンティブをしない限り台数が取れないのが現状」と分析。「ブランド価値を高めていくという宿題がある」と話した。日産は今年1月から経営体制を変更し、新たなマーケティング戦略を展開している。「一時的な台数減は避けて通れないが、平均価格を高め、実力をつけるためにじっくりと取り組みたい」としている。

 中国市場でも、日産は苦戦している。需要減速にも関わらずトヨタやホンダがなんとか踏みとどまる一方、日産の1月の新車販売台数は前年同月比0.8%減の13万3934台で、5カ月連続の前年同月比マイナスとなった。

 18年4月、重点地域の中国を統括する立場に就いたのがムニョス氏だ。米国からの鞍替えはゴーン氏の厚い信任を受けた人事ともされる。18年4〜12月期の中国販売は前年同期比7%増の109万6000台となり、「技術と安全性でブランドの価値が定着している。それを毀損しないように成長させていく」と西川社長は強気だが、足元では息切れ気味で、18年度の販売計画は従来の169万5000台から156万4000台に引き下げた。

 身の丈以上に大きく見せ、目の前の利益に固執する。これで構造改革や新車開発が遅れるようであれば、それこそ本末転倒だ。ムニョス氏はゴーン氏の逮捕後、日産をひっそりと退社した。ただ、米国と中国の販売の現場には、いまもその亡霊が漂っているのかもしれない。

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