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 「街角で軽いせき払いをしただけで周りの人たちが逃げた」「タクシー運転手がクルマの窓を開けて話そうとしたところ、こちらの顔を見るなり窓の開閉部を小さくされた」

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、海外で差別的な扱いを受ける日本人が増えている。欧州でも連日、新型ウイルスに関する報道がされており、大半の人々は冷静な対応を取っているが、中には極端な反応を示す人もいる。日本は感染が集中する中国に地理的に近いと判断しているのか、そもそも中国との区別がつかないのか、日本人を含めてアジア人を新型ウイルスに感染している可能性が高い人と見ているようだ。

仏パリのエッフェル塔の前を歩くマスク姿の女性(写真:ロイター/アフロ)
  

 感染症は日々、人々が潜在的に持つ差別意識を顕在化させると言われる。欧州に滞在する多くの中国人を中心とするアジア人は新型ウイルスに感染していないものの、差別的な扱いを受けるケースがある。フランスではアジア人が街角や学校で差別を受けているとして、ツイッターなどを通じて「私はウイルスではない」などと訴える抗議が広がっている。

 イタリアのメディアによると、同国のサンタチェチーリア音楽院では、院長がアジア人に対して医師の診察を受けるまで登校を禁じる通達を出した。中国への渡航履歴にかかわらずアジア人全般を対象にすることは、差別や恐怖をあおると批判されている。

 また、国際関係のゆがみもあらわになっている。イタリア政府は1月31日に中国だけでなく、台湾便の発着も禁止した。ベルギーに住む30代の台湾人女性は、「いろいろな意味で、ひどい仕打ちだ」と憤る。イタリア政府は台湾を中国の一部と捉え、中国便と共に乗り入れを停止したようだ。

 「いろいろな意味」というのは、台湾は中国の反対で世界保健機関(WHO)への加盟も認められていないため、新型ウイルスに関する情報の共有ができないばかりか、中国の一部という見方が定着することを恐れているからだ。台湾や国際社会からの抗議を受け、WHOは次回の会合に台湾が参加することは認める方針に転換した。

 さらに、新型ウイルスは市場のゆがみも浮かび上がらせている。これだけの被害が広がっているにもかかわらず、新型ウイルスの感染予防や重症化の防止に役立つワクチンが開発される見込みが立っていない。

 こうした事態を懸念していたのが、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏だ。「エピデミック(短期間での流行)は頻繁に起きないため、市場ではこの問題を解決できない」。ゲイツ氏は2017年に英フィナンシャル・タイムズのインタビューで、このように話していた。