ANAホールディングス(HD)は8日、フィリピン航空を傘下に持つPALホールディングス(HD)との業務・資本提携に調印した。ANAがPALの発行済み株式総数の9.5%を約105億円で取得する。

ANAは2014年からフィリピン航空と共同運航を実施しているが、今回の出資を機にフィリピン航空に取締役も派遣する見通し。共同運航など業務面での協業を深め、旅客需要の取り込みを狙う。同日の調印式でANAの平子裕志社長は「日比間の旅客需要は年10%を超える成長率でポテンシャルが高い。資本提携で長期的な友好関係が結べる」と語った。
ANAHDはこの数年、アジアでの存在感を高めようと手を打ってきた。16年にはベトナム最大手のベトナム航空にも8.8%を出資している。
背景には拡大する訪日客の旅客需要がある。日本政府は2020年に4000万人の訪日客を目指し、羽田空港などで発着枠を拡大する方針。JPモルガン証券の姫野良太アナリストは「発着枠の拡大が行われれば、交流人口が増加とともに国内外の航空会社の参入も増える。今回のPALHDとの提携も、アジアでのANAブランド浸透が狙いだ」と指摘する。
発着枠の拡大は、確かに追い風だが、ANAHDにとって無視できないのがライバルのあの会社の動きだ。日本航空は2月1日に羽田とフィリピンの首都・マニラを結ぶ路線を開設したほか、18年9月にはインドネシア航空大手のガルーダ・インドネシア航空と包括提携するなどアジア路線に注力している。
日本航空は10年に経営破綻し、公的支援を受けてスピード再建したが、17年3月末まで投資や路線開設に制限がかけられていた。その間隙を縫って、アジア路線の拡充を急いでいたのがANAHD。通称「8.10ペーパー」と呼ばれた制限策のくびきが外れた日本航空はANAHDが築き上げようとしていた牙城に食い込もうと攻勢を強めるのは間違いない。
8日の調印式でANAの平子社長は「アジア太平洋地域はまだまだ未開拓。自社便に加えて、他社との提携で路線を充実させたい」と話している。日本航空に対抗するためにも、アジア航空各社と協業する場面は今後も増えそうだ。
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