サッポロビールは7日、クラフトビールの新商品を4月9日に発売すると発表した。これまで子会社で手がけていたクラフトビール事業を2019年に本体に移管し、「イノベーティブ ブリュワー」という新ブランドを立ち上げて、事業を本格化する。
大手ビール4社ではキリンビールがクラフトビールを積極的に展開していたが、アサヒビールやサントリービールは慎重だ。サッポロビールが本腰を入れ始め、大手ビールメーカーの対応が分かれた。
サッポロが4月に発売する新商品「イノベーティブ ブリュワー ソラチ1984」は、新ブランドの第一弾の製品で、コンビニやスーパーマーケットなどで通年販売する。サッポロは子会社を通じ、2015年から数量限定品という形でクラフトビールを手がけていた。事業を本体に移し、通年販売に切り替える。「これまではテスト期間だったが、今年からは本格展開していく。日本のビール文化を広げたい」(サッポロビールクラフト事業部の小柳竜太郎部長)としている。

クラフトビール事業で先行するキリンビールは、子会社のスプリングバレーブルワリー(東京・渋谷)を通じて、地域の特産品を原料として使うクラフトビールの開発を強化する。18年に4万2000キロリットルだったクラフトビール市場が、19年に4万7000キロリットルに拡大すると予測している。
キリンとサッポロがクラフトビールに力を入れる背景に、若年層の消費者を獲得する契機にしたい意向がある。ミレニアル世代を中心に若年層で嗜好の多様化が進み、個性のある商品の中から、自分の好みや食のシーンに合わせて、その日に飲むものを選ぶ動きが広がっている。そうしたニーズをつかもうと、飲食店でクラフトビールの取扱いを増やす店が増え、キリンとサッポロの動きを後押しした。サッポロの新商品も飲食店で試験販売を行っている。
26年までにビール類の酒税が段階的に統一され、ビールは減税になる。キリンやサッポロは発泡酒や第三のビールとの価格差が縮まるタイミングを見据え、クラフトビールブームを通じ、本丸のビールに消費者を回帰させたいという狙いもある。
キリンとサッポロに対し、アサヒとサントリーの動きは静かだ。アサヒは昨年6月、業務店向けにクラフトビールのような味わいの生ビールを発売したが、商品区分は「スペシャリティービール」。アサヒグループホールディングスの小路明善社長はかねて「クラフトビールは小規模醸造所で職人が造り上げる、というのが一つの価値」と発言している。大企業が製造する商品はクラフトビールではないという考えだ。
サントリーも見解は近い。日本では定義が曖昧なクラフトビールという名称を使うことを避けている。このため、東京クラフトという商品は展開しているが、「クラフトビールという位置づけではない」(サントリーホールディングス広報部)としている。
ここ最近、ビール類は缶酎ハイやハイボールに押されていた。ビール大手のビール類の課税済み出荷量は14年連続で減少。19年も消費増税の影響を受け、缶酎ハイやハイボールへの移行が進むという声は多い。ビール離れに歯止めがかからない中で、クラフトビールはビール業界を救うカギになるか。二極化で笑うのはどちらだろうか。
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