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 日本IBMなど5社は6日、視覚障害者の移動やコミュケーションをサポートするスーツケース型誘導ロボットの開発を目指し、コンソーシアムを設立したと発表した。街を自由に移動できないことが、視覚障害者の社会参加を阻む高いハードルになっている。2020年からの3年間で、視覚障害者の自立的な移動を助けるツールを開発すると共に、実証実験を通して、社会実装に向けた課題も整理する。

 コンソーシアムを設立したのは、日本IBM、アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、三菱自動車の5社。自身も視覚に障害のある、IBMフェローの浅川智恵子氏が米国カーネギーメロン大学で取り組んでいる研究開発を、各社の得意とする技術を持ち寄ってサポートする。

 位置情報や地図情報から目的地までの最適ルートを探索し、目的地までは音声や振動などを通じて誘導、道中の障害物はカメラやセンサーで察知して回避する――。これが開発を目指すスーツケース型ロボットの基本的な機能だ。また、カメラで捉えた映像から友人を認識し、表情なども読み取って、円滑なコミュニケーションも支援する。

 高齢化に伴う視力の低下など、視覚障害者は近年増加傾向にある。日本眼科学会の調査によれば、国内には推定164万人の視覚障害者がおり、そのうち19万人近くが全盲だという。

 ただ、今回の開発は視覚障害者への支援だけにとどまるものではない。

 浅川氏は、聴覚障害者とのコミュニケーション手段を研究する中で、グラハム・ベルが電話を発明するに至ったエピソードなどを紹介しつつ、「まずは、少数ユーザー向けとして研究開発を進めるが、将来的にはいろいろな広がりが考えられる」と指摘。コンソーシアムの代表理事に就いた、日本IBMの東京基礎研究所で所長を務める福田剛志氏は、応用の考えられる事例として自動運転の車いすやAIショッピングカートなど挙げている。

 AIスーツケースが動くためには、実際の現地の様子に合わせて地図情報が更新されるなど、インフラの整備も不可欠だが、こうしたインフラの恩恵は視覚障害のない人も享受できる。障害の克服に向けた挑戦がもたらすイノベーションに注目したい。

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