キリンホールディングス(HD)が過半数の株式を保有する製薬企業、協和キリンの業績が好調だ。2019年12月期の売上高は前年同期12.6%増の3058億円でコア営業利益は同18.0%増の594億円になった。20年12月期も売上高は同6.9%増の3270億円、コア営業利益は同9.5%増の650億円を予想している。

決算会見で説明する協和キリンの宮本昌志社長(左)

 好業績の主因は、海外での売上高が伸びていることにある。18年12月期に全体の32.4%の880億円だった海外売上高は19年12月期に同39.1%の1196億円となり、20年12月期は同47.4%の1550億円を見込む。X染色体連鎖性低リン血症という遺伝性の希少疾患に対する「クリースビータ」、抗がん剤の「ポテリジオ」、パーキンソン病治療薬の「ノウリアスト」という3つのグローバル品目が海外売上高の伸びを支える。主力品の特許切れや薬価引き下げの影響などで国内事業が低調なのとは対照的だ。

 中でも強く業績をけん引しているクリースビータは、18年に初めて米国で承認を取得して以降、承認国を増やしながら、18年12月期は77億円、19年12月期は326億円と売上高を急拡大させてきた。19年9月には日本でも承認を取得し、20年12月期には日本で35億円、海外で566億円の売上高を見込む。決算説明会で宮本昌志社長は、「3年目で日米欧で600億円を超える医薬品は珍しい。もちろんピーク時に1000億円を超えることは視野にある」と胸を張った。製薬業界では年間売上高が10億ドルを超える医薬品を、超大型爆弾を意味する「ブロックバスター」と呼ぶ習わしがあり、ブロックバスター入りを意識した発言だ。

 08年に、互いにバイオ医薬に強みを持つ協和発酵工業とキリンビールの医薬事業(キリンファーマ)を統合して発足した協和キリンにとって、クリースビータは1つの象徴的な製品でもある。11年に発売した同社で初めての抗体医薬「ポテリジオ」は旧協和発酵で創製したものだった。クリースビータは旧キリンビールで創製した初めての抗体医薬だ。「これでやっと対等になれた」とキリンビール出身のあるOBは口にする。

 クリースビータの研究開発は決してスムーズではなかった。旧キリンビールの研究所で、腫瘍性骨軟化症という病気の原因となる遺伝子を探す研究に着手したのは1990年代だった。社内の研究者が遺伝子を突き止め、独自のバイオ技術で抗体医薬を取得した。後発で医薬品事業に参入したキリンビールが独自に創出したピカピカの新薬だったが、対象となる患者数が少ないなど様々な理由で開発は難航し、承認取得までには20年近い歳月を要した。「開発に着手した当初はこれほどの大型品になるとは思っていなかった。発売時のイベントで患者から直接感謝の言葉を聞いて、やってきて良かったと思った」と、キリンビールの研究者出身の宮本社長はこう感慨を口にする。

 その協和キリンに対して、キリンHDが資本関係を見直すのではという噂が投資家などの間でささやかれている。親子上場の見直し機運が高まり、製薬業界でも三菱ケミカルホールディングスが田辺三菱製薬を完全子会社化するなどの動きがあるからだ。「親子上場に関して政府が指針を定められるなどの動きがあるのは認識しており、必要なことは実施している。資本関係をどうするかは親会社に聞いてもらいたい」と宮本社長は語ったが、これから業績拡大期に入るとみられるだけに、キリンHDが手放すという選択肢は考えにくい。資本関係を見直すとすれば完全子会社化という方向だろう。

 業績拡大期に入ったとはいえ、16年に始まった中期経営計画で目標に掲げた20年のコア営業利益1000億円には届かない見通しだ。19年4月に着手したグローバル経営に向けた体制づくりもまだ改革の途上にある。20年策定する予定の次期中期経営計画でどのような成長戦略を打ち出すかが注目される。

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