高額のポイント還元などで注目の集まるキャッシュレス決済で、「先祖返り」とも呼べる現象が起きている。「LINEペイ」を提供するLINEは2019年、Visaブランドの提携クレジットカードを導入する。個人間の送金に強みをもつKyashも2018年6月以降、クレジットカードの発行でユーザー数を伸ばしている。最先端のフィンテック企業が「キャッシュレスの元祖」に頼るのは何故か。
LINEが導入するのは、対話アプリ上で使えるスマートフォン決済サービス「LINEペイ」と連携させて使えるクレジットカード。これまでLINEペイを利用するには事前にお金をチャージする必要があったが、その手間が省ける。
サービスを利用できる店舗も格段に増える。LINEペイを使える加盟店はいわゆるスマホ決済向けで国内約133万カ所にとどまる。Visaクレジットカードの導入により、同ブランドに加盟する世界5390万カ所でも使えるようになる。これまでもプリペイドカードさえ発行すればJCB加盟店約3000万店で使えたが、クレジットカードの利便性に慣れた消費者にとって今回の新サービスが大きな魅力になるのは間違いない。
「キャッシュレス決済の普及には、『どこでも使える』という安心感が欠かせない」。LINEペイの池田憲彦プロダクト室長は話す。次世代決済に対応する店舗は少しずつ増えてはいるが、世の中の誰もが使える決済手段と呼ぶにはまだまだ物足りないのが現実。そこで今回、加盟店の多さでは大きく先行するクレジットカードに肩を貸してもらうことにした格好だ。

それにしても何故このタイミングで……? 競合他社からはそんな声もあがる。LINEの念頭にありそうなのは、2019年秋に実施予定の消費増税だ。
政府は増税にあたり、「景気の下支え」「キャッシュレス決済の普及」という二兎を追うポイント還元策を実施する方針。還元の原資として19〜20年度に計上予定の予算は4000億円程度。社会現象にもなったPayPayの実に40倍だ。国の強力な後押しは、キャッシュレス決済事業者にとってはまたとないビジネス拡大のチャンス。池田室長も「できるだけ増税前に導入したい」と意気込む。
LINEの今回の発表は「2019年中に導入」という内容にとどまり、サービス開始の具体的な期日や年会費の有無などはこれからの検討事項という。こうした新サービスの発表は消費者向けのお知らせの意味合いもあり、詳細まで案内できるタイミングを待つのが一般的。増税前にあらかじめ認知度を高めておくためにも、LINEが「時間を買う」姿勢を強めているとみることもできる。
加盟店の開拓では一日の長があるクレジットカードだが、決済してから利用明細への反映に時間がかかるなど、日々の決済手段としては不便さも指摘されてきた。LINEは決済から数秒でアプリに結果を確認できるようにするなど、フィンテックサービスならではの使い勝手をクレジットカードでも実現させる考え。キャッシュレス決済の普及に向けて、他社にも追随の動きが出てきそうだ。
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