記者会見で中計について説明する東芝機械の飯村幸生会長兼CEO

 東芝機械は2月4日、2024年3月期までの中期経営計画を発表した。同社に資本効率の改善を求め続けてきた「物言う株主」村上世彰氏から株式公開買い付け(TOB)を仕掛けられている真っ最中での中計発表。150億円の配当を打ち出すなど、村上氏側に配慮したとみられる株主還元強化策も盛り込まれた。

 しかし5日の株式市場で、東芝機械株は前日比で約0.3%下落した。大幅増配を打ち出した翌日に株価が下がるのは異例のこと。これまで中計の目標をことごとく未達、下方修正してきた「オオカミ少年」のツケが出た。

 「どうせまた計画を達成できないのでは。どこまで信じればいいのか」(独立系投信マネジャー)。これまでと比べて大幅増配になるにもかかわらず下落した株価に込められた思いは、さしずめこんなところか。例えば同じ2月4日に増配を発表した日本曹達の株価は5日、約15%高と急騰した。これが株主還元強化策を発表した後の一般的な反応だろう。しかし東芝機械株はそうはいかなかった。

 「会社が村上ファンドの要求に一定程度応えたことで、ホワイトナイト(白馬の騎士)を含めたTOB合戦がこれ以上過熱することはないと踏んだ個人投資家が利益確定売りを出した」(投資ファンド幹部)面もあるとはいえ、市場が4日の発表を評価しなかったのはなぜか。

 東芝機械は18年度までの中計で売上高、利益共に大幅に未達に終わった。旧村上ファンド系のオフィスサポート(東京・渋谷)の資料によると、その前も毎年のように中計を刷新し、一度も目標数値を達成することがなかったという。4日に発表した中計も、実は昨年5月に発表した中計を1年もたたないうちに下方修正したものだった。

 過去の中計目標の未達について、東芝機械の飯村幸生会長兼CEO(最高経営責任者)は記者会見で「過去の未達は反省すべき課題。今回は覚悟を感じてもらい、コミットメントという成果を見てほしい」と話した。

 しかし村上氏側を代表して中計説明会に出席したオフィスサポートの福島啓修氏は、「今回のコミットメントを尊重したいと思っているが、これまで外してきた中計は無罪放免というふうにも聞こえる」と指摘する。そうした「未達癖」が市場に評価されなかった可能性がある。

 一方、下方修正した新たな中計の目標ですら達成が困難なのでは、という指摘もある。東芝機械の19年3月期の営業利益率は3.3%、自己資本利益率(ROE)は5.0%。今回発表した中計では、23年度までに営業利益率8.0%、ROE8.5%の達成を目指すとした。それぞれの事業部で抱えていた生産と研究開発部門を本社に集約し、カンパニー制に切り替えるだけでなく、固定費削減に向けた希望退職を実施することで、収益性の向上を狙うという。

 さらに中計で抜本的な事業再編に踏み切らなかったことも大きいだろう。東芝機械は受注の繁閑を平準化するために、射出成型機や大型工作機械、ダイカストマシン、ロボット、制御機械など多種多様な製品群を抱えている。売上高1000億円前後と企業規模は大きくないにもかかわらずポートフォリオが複雑なことについて、ある工作機械業界関係者は「東芝機械はどの事業も規模や業界でのポジショニングが中途半端。現状のままで生き残るのは難しいだろう」と指摘する。

 それでも中計では事業売却などについての言及はなく、「各カンパニーの事業価値向上に向けてM&Aや新規事業への投資を推進する」とするのみ。事業ポートフォリオに積極的にメスを入れない方針であることがうかがえる。

 飯村会長兼CEOは「東芝傘下のときの生ぬるい状態から脱しきれていなかった」とこれまでを振り返ったが、東芝が東芝機械株を売却したのは17年3月のこと。東芝グループを抜けてから約3年間、生ぬるい状態につかり続けていたとも言える。工作機械業界関係者は東芝機械について「少し常識とずれた会社」と表現する。世間の変化とのずれを修正しなければ、株式市場から信頼を得ることは難しいだろう。

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