携帯電話大手3社の2018年4~12月期の決算が5日までに出そろった。いずれも売上高、営業利益ともに前年同期を上回る結果となったが、今後の焦点は政府が求める「官製値下げ」の“要請”にどこまで応えるかだろう。決算会見では、値下げについて3社とも以前より具体的な発言があった。今年10月には楽天が携帯電話事業に参入するが、その前に料金競争が激しくなる可能性も出てきた。
大手が値下げを模索する動きが活発になった発端は、菅義偉官房長官が18年8月に「(携帯料金は)4割程度値下げの余地がある」と発言したことだ。その後も大手を念頭に日本の携帯電話料金の高さを問題視する発言を繰り返した。これに応える形で10月末、NTTドコモが「19年度第1四半期に現行より2~4割安い新料金プランを導入し、消費者に最大年4000億円を還元する」(吉澤和弘社長)と表明した。
これに対抗する考えを示したのがKDDIの高橋誠社長だ。1月31日に開いた決算発表の場で「17年に導入したプランで既に3800億円ほど顧客還元した」と、ドコモに先駆けて値下げしたことを強調。その上で「ドコモが当社の料金水準よりも踏み込んできた場合、競争なのでしっかり対応していく必要がある」と、追加値下げに動く可能性を示唆した。
KDDIの翌日に決算会見を開いたドコモの吉澤社長は、値下げについて「第1四半期の後ろの方で実施する」とより詳細な実施時期を明言。5日に決算を発表したソフトバンクの宮内謙社長は、低料金を求める層にはサブブランドのワイモバイルで応えているとしつつも、ソフトバンクの携帯料金の引き下げについても「競合他社の動向を見ながら柔軟に対応していきたい」と述べた。

各社が値下げについて具体的な発言をする中、今年10月には楽天がドコモ、KDDI、ソフトバンクに次ぐ第4の携帯電話会社となる。同社の三木谷浩史会長兼社長は「インターネットを本業とする企業が携帯電話事業に参入するのは非常にエポックメイキングなことだ」と気炎を上げるが、「官製値下げ」をきっかけに、先行する3社が値下げで迎え撃つ格好になりそうだ。
これまでも官邸との太いパイプが指摘されてきた楽天。三木谷会長はかつて携帯事業で設定する料金プランについて「格安スマホと同水準にしたい」と述べていた。大手3社の寡占状態が続いて料金が高止まりしていた国内携帯市場に、割安感のある料金プランで新風を起こすはずが、作戦に狂いが生じかねない事態だ。業界内からは「政府にハシゴを外されたようなものだ」(業界コンサルタント)との声も聞こえてくる。
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