トヨタ自動車は5日、定額料金で車に乗れる新サービスを始めると発表した。対象は高級車「レクサス」で、セダンやSUV(多目的スポーツ車)など6車種を乗り継ぐことができる。月額料金は任意保険や税金など諸費用込みで19万4400円(税込み)。6日から都内のレクサス販売店で始め、今夏以降、全国で展開する。
「プリウス」や「クラウン」など5車種から1車種を選んで3年間乗れるサービスも併せて始める。月額料金は4万9788円(税込み)から。
クルマの消費が所有から利用へと移る中、「サブスクリプション」と呼ばれるサービスを本格的に展開、幅広い層からの支持拡大を狙う。

もっとも、サブスクリプションの成功には欠かせない視点がある。世界で様々な業界向けに定額課金システムの導入を「黒子」として支援してきた米ズオラのティエン・ツォCEO(最高経営責任者)は断言する。「顧客をサブスクライバー(出資者、加入者)に捉え直す必要がある」
ツォ氏は失敗例として米ゼネラル・モーターズ(GM)が2年前に始めて昨年、停止したサブスクリプションサービスを挙げる。高級車ブランド「キャデラック」の複数の車種を月20万円程度の料金で年18回まで自由に乗り換えられる仕組みだったが、「ただクルマを定額で提供するというプロダクト寄りの発想に説得力はなかった」(ツォ氏)。サービスを「顧客」に提供するという発想から抜けきれなかったのだ。

トヨタが見習うべき成功例はある。17年5月に定額制サービスを導入した米フォード・モーターだ。同社は並行して「フォードパス」というアプリの展開を始めている。1つのIDでサブスクリプションを含めた自動車関連の支払いやカーシェアなどサービスの利用、駐車場やレンタル自転車の予約などができるようにした。
こうしたサービスの「玄関口」を設ければ、顧客行動が見える化され、顧客の使い方のみならず、何を不満に思っているのかなど、課題も浮き彫りになる。「サブスクライバーとこうした課題もシェアすることこそが、新たなモビリティーサービスにつながる」とツォ氏は強調する。
トヨタはGMのように失敗例を積み上げるだけに終わるのか、フォードのように成功モデルを作れるのか。顧客にサービスを提供する発想を捨てられるかが分かれ目となるはずだ。
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