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(写真:ロイター/アフロ)

 伊藤忠商事が2月5日に発表した2019年4~12月期の連結最終利益は4267億円と、5年連続で最高益を更新した。通期目標に対する進捗率は85%と盤石ながら、20年3月期予想の上方修正は見送った。目標達成の手堅さに定評がある伊藤忠ならではといえる一方で、石橋をたたいて渡る慎重姿勢の背景には国内外に潜むリスクが見え隠れする。

 鉢村剛最高財務責任者(CFO)は2月5日に開いた記者会見で、通期目標の5000億円を据え置いた点について「強含みではあるが、(20年3月期通期目標である)5000億円の達成に全力をつくす」と語った。

 伊藤忠商事の決算の堅調さは、総合商社の中でも際立っている。米中貿易摩擦のあおりによる自動車などの不調で、19年秋に三菱商事と住友商事が通期目標を下方修正。丸紅、双日も5日、摩擦に端を発する世界景気の低迷などを理由に下方修正を発表した。三菱商事が5日に発表した19年4~12月期の連結最終利益の通期目標(5200億円)に対する進捗率は72%にとどまった。

 伊藤忠の堅調さは、グループ会社の手綱をしっかりと握っていることに起因する。グループ会社のうち、3分の2が利益貢献が20億円以下の中小規模で、87.5%が黒字を達成している。今決算では、ほけんの窓口グループや、プリマハムなどへの追加出資による連結子会社化に伴う企業価値の再評価に関する利益が貢献するなど業績堅調なグループ会社も取り込みが進んでいる。

 堅調な決算につきまとう不安が、中国でまん延する新型コロナウイルスだ。「中国最強商社」(同社ホームページ)を自認するだけに、総合商社のなかでも中国関連事業が大きいイメージがある。実際、同社の収益のうち、中国に関連する割合は25%超。そのうち10%は鉄鉱石が占め、5%は食料や繊維など企業向け取引。残りは、10%を出資する中国中信集団(CITIC)から毎年得る500~600億円程度の配当が占めるイメージだ。

 景気減速の懸念から価格下落の懸念が強まっている鉄鉱石は、「価格が高いうちにヘッジをかけたので(価格変動に伴う)感応度はほぼないところまできている」(鉢村CFO)として既にリスクは回避したと強調。中国で手掛ける企業向け取引は、景気減速の影響が現れるとしても、じわりと出てくるとの見方で、対応可能との見立てだ。

 ただ、金融などを手掛けるコングロマリット、CITICは業績堅調ながら、株価は新型コロナウイルスが本格的に中国で流行した1月以降、下落しているという。「堅調な決算と乖離(かいり)した株価がリスク」(鉢村氏)となり得るとしている。

 総合すると、ただちに中国リスクが業績に悪影響を与えることはなく、通期修正の据え置きとは直接的な関係はないとの説明だが、むしろ注意が必要なのは、日本国内が中心の繊維や食料だ。暖冬などで減速感が出ている繊維部門の進捗率は65%と弱含んでいる。米中貿易摩擦の影響が少なくて済んだのは、「日本国内の内需に業績が支えられている面がある」(アナリスト)。国内事業の足場がためは、商社NO.1には必須条件だ。

 米中貿易に関する第1段階の合意が決まり、中国の対米輸出が動き出そうとした矢先に、誰もが予想できない形で降りかかった新型コロナウイルスリスク。世界経済の下方リスクが高まる中、「かせぐ、けずる、ふせぐ」の実践で成長してきた伊藤忠商事の真価が問われる。

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