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(写真:PIXTA)

 塩野義製薬の連結業績にブレーキがかかった。2020年3月期の売上高見通しは前期比2.4%減の3550億円、営業利益は同2.1%増の1415億円と、従来予想からそれぞれ120億円、85億円引き下げた。これで19年3月期まで4期連続で達成していた増収も途絶える見通しだ。

 下方修正の主因は、国内医療用医薬品のうち戦略品3品目の販売見通しを引き下げたことだ。抗うつ薬のサインバルタは293億円から273億円に、注意欠陥多動性障害治療薬のインチュニブは136億円から106億円に、抗インフルエンザ薬のゾフルーザは280億円から180億円に引き下げた。

 特に19年3月期に263億円を売り上げて、抗インフルエンザ薬では国内トップの売上高となったゾフルーザが厳しい状況にある。19年10~12月期の売上高はたったの4億円と、前年同期の95億円から大きく落ち込んだ。第一三共の抗インフルエンザ薬であるイナビルが19年10~12月期に105億円を売り上げ、前年同期から61億円増やしたのとは対照的だ。前年度の卸在庫が多かったことなども急落した一因だというが、180億円の修正目標についても厳しいとの声がアナリストの間から上がっている。シェアを見ても20%を割り込み、タミフルやイナビルに大きく水をあけられた状況だ。

 ゾフルーザが苦境に立ったのは、学会などが小児に対する慎重な投与を促したからだ。日本小児科学会は19年10月21日、「12歳未満の小児に対してゾフルーザの積極的な投与を推奨しない」とする内容を含むインフルエンザ治療指針を発表している。日本感染症学会も12歳未満の小児については「慎重に投与」とする提言をまとめた。学会がこれらの提言を作成した背景には、ゾフルーザの治験の際、H3N2型に分類されるA型インフルエンザに感染した12歳以下の小児に、高い頻度で耐性ウイルスが出現したことがある。この結果、ゾフルーザに耐性ウイルスが出現したことが報道などでも大きく取り上げられ、マイナスのイメージがすっかり定着してしまった。

 ところが今シーズンに限って言うと、ゾフルーザへの耐性ウイルスが多く見られているわけではない。国立感染症研究所の調査によると、1月28日までに検出したゾフルーザへの耐性株はH1N1型のウイルスで1株あっただけ。解析した株数に対する耐性株の比率で見ると、タミフルの1.9%に対してゾフルーザは0.3%と低い。昨シーズンの調査では、H1N1型で2.3%、H3N2型で8.0%のウイルスに耐性株が見られたのとは大きく異なる。このことから、昨年出現した耐性ウイルスが広がってはいないことが確認できる。また、今年はゾフルーザへの耐性が出現しやすいとされるH3N2型がほとんど流行していないこともあるが、抗ウイルス薬への耐性ウイルスの出現状況がシーズンによって異なることは認識しておいた方がよさそうだ。

 もちろん、今シーズンも今後、ゾフルーザに対してウイルスが出現してくる可能性はあり、警戒を怠るべきではないだろう。一方で、ゾフルーザには体内のウイルス量を速やかに減らせることや、タミフル、イナビルなどの他の抗インフルエンザ薬とはウイルスを抑える仕組みが異なるなどの特徴から考えて、医療的に意義のある薬であることは確かだろう。ゾフルーザが修正した販売目標を達成できるかは、こうした特徴をアピールしつつ、マイナスイメージを払拭していけるか次第だ。

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