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米国は東アジアにおける戦力の均衡を図る

 米国は東アジアにおける中距離核戦力の不均衡を懸念している。それをもたらしているのは中国と北朝鮮だ。中国は「A2AD」と呼ぶ対米軍事戦略の一環として、大量のミサイルを配備している。米国のハリー・ハリス太平洋軍司令官(当時)は17年4月、「中国人民解放軍は2000発を超える弾道ミサイルと巡航ミサイルを保有している。このうち95%は、中国がINF廃棄条約の締結国であれば、違反に当たるものだ」と指摘した。さらに、これらのミサイルの一部は通常の弾頭だけでなく核弾頭も搭載できる。

 米国は現在、中国のこのミサイル群に直接対抗する中距離ミサイルを保有していない。仮にINF廃棄条約が失効すれば、米国は東アジアに中距離核戦力を配備し「中国がミサイルを発射したら米国は核兵器で報復する、と示すことで抑止が可能になる」(拓殖大学の川上高司教授)。

 北朝鮮が開発を進める中距離核戦力(日本を射程に収める)に対しても、米国は直接対抗する手段を保有していない。RUSI Japanの秋元氏は「北朝鮮の核ミサイルの開発をこのまま容認すれば、近い将来、北朝鮮が保有する核に対して、同じような地域配備の核抑止力を東アジアにも配備すべきだという意見が強まるだろう」と見る。

在日米軍基地に中距離核戦力配備が配備される……

 米国が東アジアに中距離核戦力を配備するとして、どこを選ぶのか。川上教授は「米国は、在日米軍基地に中距離核を配備できるよう日本に求める可能性が浮上する」と指摘する。

 米国はすでに、潜水艦や戦略爆撃機に核兵器を搭載して東アジアに派遣する体制を整えているが、どこに核兵器を配備しているかは明らかにしない方針。これに対して、日本の陸上に配備すれば、北朝鮮や中国に対して抑止力を明示的に示すことができる。

 ただし、もしそうなれば、日本には大きなメリットとデメリットが生じる。

 まずデメリットについて。その一つは「非核三原則」を見直す必要に迫られることだ。

 非核三原則は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」との3項からなる。米国による在日米軍基地への中距離核戦力配備は、「持ち込ませず」と整合しない。同三原則の改定について国民の理解を求めるのは非常に困難だろう。これは日本の「国是」であり、国民から強く支持されている。憲法9条の改正を上回る政治問題になりかねない。

 加えて、中距離核戦力を配備した基地が、敵国の攻撃目標にされる恐れが生じる。二つ目のデメリットだ。

 一方で、メリットもある。北朝鮮による日米離間を阻止する効果が期待できる。核ミサイルをめぐる米朝協議が続く中、「米国は、米本土を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発を北朝鮮が凍結するならば、核兵器の保有を事実上認めることで交渉を決着させるかもしれない」との懸念が消えない。この取引は、北朝鮮の核の脅威が米本土には及ばないため、「米国第一」を掲げるトランプ政権は受け入れやすいからだ。

 「この時、北朝鮮に中距離弾道ミサイルが残れば、日本に対する核の脅威はなくならない。日本にとって最悪のシナリオだ。米国による核抑止が日本に効かなくなるデカップリングが起こる可能性がある。ただし、米国が、北朝鮮を射程に収める中距離核戦力を日本に配備すれば、北朝鮮による日本への核攻撃を抑止することができる」(川上教授)。

 INF廃棄条約の失効は、日本にとっても我が事になる可能性がある。