(写真:shutterstock)
  

 「現時点では、中国以外の路線で影響は出ていない。ただ中国経済から波及する形で貨物やビジネス利用に影響が出てくると、その限りではない」

 1月30日にANAホールディングスが開いた2019年4~12月期決算の会見。マイクを手にした福沢一郎取締役は新型コロナウイルスの感染拡大の影響について、こう話した。

 会見では、全日本空輸(ANA)の2月の中国発の予約旅客数が、前年比でほぼ半減、日本発についても約4割減にとどまっていることが明らかになった。だが、現段階では業績への影響は限定的とみているようだ。福沢氏は「ネットワーク拡充の中で1つの地域に偏らない路線ポートフォリオを組んでいる」と話す。国際線全体に占める中国線の売上高の比率はSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した03年ごろは約2割だったのに対して、現在は約1割となっているとし、リスクヘッジが進んでいることを強調する。

 とは言え、日々刻々と新型コロナウイルスの感染拡大が伝えられる中で、楽観はできない。それが冒頭の発言だ。

 SARS流行時の03年5月、ANAグループでは感染源とされる中国を含むアジア・オセアニア方面の旅客数は前年同期の43.6%にまで落ち込んだ。加えて、イラク戦争の影響もあって、北米方面(前年同期比76.9%)や欧州方面(同85.9%)でも利用が減少し、国際線全体でも58.2%にまで下落した。

 中国の国内総生産(GDP)は03年から18年の間に8倍近くになっており、世界経済における存在感は明らかに大きくなった。現時点では、目立った旅客減少が中国路線にとどまっているとしても、今後の新型コロナウイルスの感染状況やそれに伴う中国経済の減速によって、影響が他路線に及ぶ可能性は否定できない。

 日本航空(JAL)も事情は同じだ。1月31日の19年4~12月期決算発表でJALの菊山英樹取締役は「10日ほど前から予約のキャンセルが顕著に出ている」と説明した。通常であれば出発日が近づくにつれて予約率は上昇するが、2月の中国路線では1月22~31日の間に予約率が25ポイントも減少したという。

 現時点でも影響は小さくはないが、JALにとっても懸念は中国路線以外に旅客減少が波及するか否かということにある。菊山氏は、現段階では中国路線以外の路線について「顕著な旅客動向の変化はない」としながらも、「需給のマインドを注視していかなければいけない」と警戒する。

 両社とも今期は、米中貿易摩擦などを背景に国際線事業で苦戦を強いられている。今回の決算発表で、ANAホールディングスは19年10月に純利益を約13%下方修正した20年3月期の業績見通しを据え置いた。一方、JALは1月31日、20年3月期の純利益を18.4%下方修正した。

 両社とも現段階では新型コロナウイルスの影響は盛り込んではいないため、1月下旬からの感染拡大は業績の大きな下振れ要因となり得る。両社とも羽田空港の発着枠の拡大に伴い、中国路線も含めて国際線の供給量を増やす計画だが、今後の旅客動向次第では拡大後の運航にも影響が出てくる可能性がある。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。