東芝は2月3日、デジタルデータの流通を手掛ける完全子会社「東芝データ」を設立したと発表した。車谷暢昭会長CEO(最高経営責任者)が重視してきた「データ事業」を推進する事業会社だ。その新会社の事業の第1弾で頼ったのは、親子上場を唯一維持した東芝テック。ちぐはぐさを残しての船出に見える。

 2018年10月に独シーメンス日本法人から東芝に転じて最高デジタル責任者を務める島田太郎執行役常務が新会社のCEOを兼務する。島田氏は2月3日に都内で開いた発表会で「さまざまな社会インフラから生まれるデータの多くがこれまでは埋もれたままだった。それをサイバー空間に転写し、新しい価値に変えていく」と意気込みを述べた。

2月3日、記者会見した東芝データの島田太郎CEO(左)と北川浩昭COO(最高執行責任者)
 

 22人の陣容でスタートする新会社が第1弾として取り組むのが、東芝テックの「スマートレシート」を活用する事業だ。スマートレシートは、店舗で買い物客がスマホアプリのバーコードを読み取ってもらうと、電子化されたレシートデータをアプリで受け取れるシステム。この購買データを東芝データが管理し、クーポンを配りたい小売業や家計簿アプリを手掛ける企業、商品開発をしたいメーカーなどに活用してもらう。購買データに続き、健康データや人材データ、行動データなどの流通に乗り出す計画だ。

レシートデータをアプリで受け取れる東芝テックの「スマートレシート」を活用するデータ事業を第1弾とする
 

 「東芝テックのPOS(販売時点情報管理)システムは世界トップ。顧客との関係が最も強いところで取り組むのは極めて自然だ」。島田氏はシーメンスが世界トップのFA(ファクトリーオートメーション)の領域でデータ活用に取り組んでいることを例に挙げながら、東芝テックのスマートレシートを活用する意義を説明した。

 とはいえ、新会社が扱うデータは「東芝のハードウエアが絡むかどうかは条件にならない」(島田氏)。東芝の製品と競合する企業のデータも取り込み、東芝が製品を手掛けていないデータも扱うために別会社にしたと説明する。「立場はニュートラル。東芝が入らない社名も議論した」と島田氏は話す。

 東芝は19年11月に上場子会社4社のうち、東芝プラントシステム、ニューフレアテクノロジー、西芝電機の3社を完全子会社にすると発表し、20年1月までにTOB(株式公開買い付け)を成立させた。東芝の車谷CEOは「データの出どころが増える」と発言するなどデータ事業と完全子会社化を結びつけて説明した。その一方で、残る東芝テックについては「テックを100%(子会社)化することがデータ事業に必須ではない」とも話している。

 東芝の製品との関連が深ければデータの強みは生きるが、競合企業が相乗りを避けるとデータ事業の価値は下がってしまう。東芝が中立的な立場になるデータであれば集めやすいが、今度はグーグルなど米IT大手がライバルになる。東芝ならではの強みをどこで出していくのか。東芝データの船出のちぐはぐさはデータ事業の難しさを象徴している。

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