中外製薬の連結業績が好調だ。2019年12月期は売上高、コア営業利益共に3期連続での過去最高を更新。17年11月に米国で初めて承認された血友病治療薬のヘムライブラの売り上げ拡大が寄与した。20年12月期は薬価改定や後発品発売の影響で国内は減収となる見通しだが、それでも海外で売り上げを伸ばし、トータルでは4年連続の増収増益を見込む。

1月30日、19年12月期連結業績を説明する中外製薬の小坂達朗社長CEO

 公的医療保険という限られた財源の中で収益を得る医療用医薬品ビジネスの世界には、予想以上の成功をもろ手を挙げては喜べない後出しジャンケンのような仕組みがある。「市場拡大再算定」というのがその1つで、年間の売上高が150億円を超えて、かつ当初予想の2倍以上となったなどの条件に該当する医薬品は有無を言わさず薬価を引き下げられる。

 中外製薬は、乳がん治療薬「パージェタ」、血友病A治療薬「ヘムライブラ」、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」の3品目がこの対象となった。この3品目の薬価は4月から引き下げられる。加えて、これまで業績をけん引してきたリツキサン、アバスチン、ハーセプチンという主力の抗がん剤に対し、バイオ医薬品への後発品であるバイオシミラーが登場した。これによってバイオシミラーに市場を奪われるばかりか、新薬創出加算も得られなくなり、踏んだり蹴ったりの状況にある。ちなみに新薬創出加算は一定の条件を満たした新薬に対して薬価引き下げを猶予する制度で、後発品が無いことが条件となるので、後発品が出てくれば加算がなくなる。

 この結果、20年12月期には、アバスチンは前年同期よりも223億円、ハーセプチンは75億円、リツキサンは56億円それぞれ売上高が減少する見込み。この3品目以外にも、骨粗しょう症治療薬のエディロールなどにも後発医薬品が登場する見込みで、抗がん剤のテセントリクや血友病治療薬ヘムライブラなどの新薬が売り上げを伸ばすものの、国内の売上高は19年12月期の4376億円から、260億円減って4116億円となる見通しだ。

 ただ、国内は減収となるものの、自社創出品がスイスのロシュの販売網を通じて世界で売れに売れている。とりわけヘムライブラは、ロシュが19年12月期にグローバルで前年同期比6倍超の13億8000万スイスフラン(約1550億円。中外製薬の日本での売上高を含む)を売り上げた。この勢いは20年12月期も続きそうで、主にヘムライブラが中外製薬にもたらすロイヤルティーおよびプロフィットシェア収入は19年12月期の765億円から1410億円に拡大する見通しだ。この結果、全社の売上高は20年12月期に前年同期比7.8%増の7400億円となり、営業利益は同22.3%増の2750億円を予想している。

 好業績が続く見通しとなったことから、19年1月31日に発表した19年度から21年度までの中期経営計画「IBI21」で数値目標に挙げていた年平均のコアEPS(1株当たり利益)成長率を、これまでの「High single digit(一桁台後半)」から「30%前後」へと大きく引き上げた。併せてコアEPS対比で平均して「50%」としていた配当性向を「45%」に引き下げたものの、1株当たりの配当金は19年12月期の年間140円から20年12月期は同150円と増配とする方針だ。

 国内が薬価改定などで厳しいのに対して海外が好調な結果、海外売上高は増加する一方で、海外売上高比率は19年12月期の35%から、20年12月期には44%に増加する見通しだ。「将来の見通しはコメントできないが、国内と海外がフィフティフィフティになるのはあり得るだろう」と小坂達朗社長CEOは語った。

 スイスのロシュグループの創出した製品を日本で販売する代わりに、自社創出の製品をロシュの販売網を使って売るというビジネスモデルで、ロシュの傘下に入って18年。そのときの決断が大きな果実を実らせつつある。

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