国内証券首位の野村ホールディングス(HD)が大幅赤字に転落した。他の証券会社が減益ながらも最終黒字を確保する中、同社が1月31日に発表した2018年4~12月期決算は1012億円の最終赤字。金融危機が発生した08年以来の大きさとなった。

損失が膨らんだのは、米子会社インスティネットののれんなど約810億円を減損処理したため。インスティネットはヘッジファンドなど機関投資家向けの売買執行を手がける会社で、07年に12億ドルで買収した。法人部門の収益力低下のため、のれん約670億円全額を減損処理することにした。そのほか、08年に買収したリーマンブラザーズの欧州・アジア部門で発生していたのれん約140億円も減損処理したという。今回で、「リーマンブラザーズ買収関連ののれん減損処理は終了した」(野村HD広報)。
個人営業の転換、思うように進まず
野村はこれまで、法人や海外が厳しい収益環境でも個人営業部門が下支えしてきた。ただ、証券業界は金融庁が「顧客本位の業務運営」を金融機関に求めた影響もあり、頻繁な売買手数料に依存したビジネスモデルを変えねばならなくなっている。そこで「預かり資産営業」と呼ばれる、顧客のニーズを聞き取り、預かる資産を増やす手法にかじを切ろうとしているが、従来のような収益性が確保できていないのが現実だ。同社幹部の1人は「社内では元の営業のやり方に戻そうという議論も出始めている」と明かす。
こうした事態を打開すべく同社は、4月にも新たな構造改革プランを発表する見通しだ。すでに昨年12月、グループ全体で600億円の固定費を4年かけて削減する計画も発表している。このタイミングで大きな減損処理をした背景には、新しいプランに移行する前に、不安材料を早めに解消しておこうとする経営判断があったものと思われる。
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