全1207文字

 ドンキホーテホールディングスは31日、東京都内で臨時株主総会を開いた。ドンキホーテホールディングスからパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスへの社名変更と、創業者の安田隆夫氏を取締役に選任することを決議した。

 ドンキホーテの社名はスペインのセルバンテスの小説「ドン・キホーテ」の主人公になぞらえて、既成の常識や権威に屈しないとの考えから付けられた。「ドン・キホーテ」の1号店出店から今年で30年。圧縮陳列に代表される、買い物にエンターテインメント性を取り入れた店舗は「ドンキ」と呼ばれ、唯一無二の流通業態として消費者に刷り込まれるまでになった。

 その社名を「パン・パシフィック」という、一見するとこれまでとは何の関係もないものに2月1日に変更する。株主総会の招集通知には「多様で変化していく消費者のニ ーズに応えるという決意をこめ、また、日本のみならず環太平洋地域において小売業の有力な企業として発展していくという決意をこめて」と記載している。

 唐突に出てきた社名のようにも思えるが、ドンキホーテは2013年、シンガポールにPan Pacific International Holdingsを設立している。17年には現地に「DON DON DONKI」の1号店を開業した。

シンガポールの「DON DON DONKI」の店内。「焼きもろこし」が人気だ。

 シンガポールの「DON DON DONKI」を訪れてみた。精肉や野菜など生鮮品の充実が目を引き、日本の「ドン・キホーテ」と比較すると、一般的なスーパーに近い。焼き芋や焼きトウモロコシはシンガポールの消費者の間でちょっとしたブームになっており、行列ができるほどだ。日本からの輸入品も多く、価格は他の日系店舗と比べても割安のようだ。現地の日系企業関係者は「独自の流通網を構築しているようで、内情を知りたい」と話す。

 店舗はシンガポールの中心部にあるため会社員の来店客が多いが、高齢者の姿もあり、幅広い消費者に受け入れられていることが分かる。シンガポールでは既に3店舗を開いた。今年はタイのバンコクでの出店も予定されている。

シンガポールの店舗は生鮮食料品を充実させている

 シンガポールで海外事業を統括してきたのが、創業者の安田氏だ。1980年にドンキホーテの前身となる企業を設立。15年まで創業トップとして、異質の存在だった同社を流通業者の誰もが注目する企業に育てた。15年7月以降はシンガポールを拠点に現地進出の陣頭指揮を取ってきた。

 ドンキホーテは昨年、ユニー・ファミリーマートホールディングスからユニーの株式を買い取り、完全子会社にすると発表した。米国でもスーパーなどを買収し、事業を広げている。アジアの事業に通じた安田氏の取締役復帰は今後の海外展開を指揮する人材の確保という実利が透ける。パン・パシフィックという新社名で新たな創業に取り組むという旗も内外に示した。31日の株主総会を後年に振り返ると、会社の形を変える転換点だったという評価になるかもしれない。