不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングス(HD)の争奪戦が新展開を迎えた。ソフトバンクグループ傘下の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループが1月29日に突如、ユニゾHDへのTOB(株式公開買い付け)価格を1株当たり4100円から5200円に引き上げたからだ。ユニゾHDの買収希望者が入り乱れるなか、途中でユニゾHDと仲たがいし息をひそめていた格好のフォートレスが大逆襲に出た。名付けて「死んだふり作戦」(フォートレス関係者)からの反撃は成功するのか。

ユニゾホールディングスの争奪戦が新展開を迎えた

 ユニゾHD争奪戦は、2019年7月に旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が1株当たり3100円で敵対的TOBを仕掛けたのがきっかけ。その後、ユニゾHDがホワイトナイト(白馬の騎士)として連れてきたのがフォートレスだった。フォートレスは1株当たり4000円で19年8月からTOBを開始した。

 フォートレスのおかげでユニゾHDはHISの敵対的TOBを撃退したが、その後は米投資ファンドのブラックストーン・グループが1株当たり5000円でのTOBを提案するなど複数の買収希望者がフォートレスより高値での買収に名乗りを上げたこともあり、ユニゾHDは揺らいだ。ユニゾHDはフォートレスにTOB価格を5000円に引き上げるよう迫ったがフォートレスは応じなかったため、次第に争奪戦から取り残されていった。

 だがフォートレスはあきらめたわけではなかった。価格面で争奪戦から取り残されたものの、ブラックストーンなどは実際にTOBをかけたわけではなく、争奪戦はあくまでも提案の域を出ていなかったからだ。すべての買収交渉が不調に終われば、最終的には実際にTOBをかけているのはフォートレスだけ、となってTOBが成立する可能性はあった。

 そこでフォートレスは「死んだふり」(フォートレス関係者)の持久戦にでた。TOBの期限を何回も延長し、ひたすら「あわよくば」(同)を待つ戦略だ。何回か期間を延長して60営業日というTOBの法定期間上限に達すると、次はTOB価格を4000円から4100円に100円だけ上げた。TOBの条件を変えれば、60日を超えてもさらに期間延長が可能だからだ。100円だけ価格を上げてもほかの買収候補者の価格には到底及ばない。この引き上げは、単にTOB期間を延長する口実を得るためだったとみられる。こうして度重なる延長を繰り返し、フォートレスがTOBを開始してからじつに半年近くがたとうとしている前代未聞の事態となっている。

 そうこうするうちにほかの買収者との交渉もなかなかまとまらなかったユニゾHDは19年末、米ファンドのローンスターと組んだEBO(従業員による買収)という奇策を発表した。EBOに伴うTOBの価格は1株当たり5100円。そしてフォートレスのTOBに対するユニゾHDの意見表明も、当初の「賛成」から「留保」を経て「反対」に変わった。これでフォートレスの戦略は壁にぶちあたったように見えた。

 だが「死んだふり作戦」の神髄は、最後まで切り札を取っておくことだった。フォートレスはもともとTOB価格を引き上げる意向を持っていたのだ。しかし各方面との交渉がまとまらないうちに切り札を出すのは「もったいない」(フォートレス関係者)。それでもEBOというTOBが正式に始まったため、とうとう切り札を出さなければいけないときが来た。

 しかも1月28日にはブラックストーンが1株当たり5600円での買収提案を公表した。そこでフォートレスが提示したのが1株当たり5200円という絶妙な価格だった。EBO価格は上回り、ブラックストーンの価格は下回るという設定だ。これまでの数カ月にわたる交渉でもユニゾHDとブラックストーンは合意をまとめられていないことに加え、ブラックストーンに敵対的TOBをやる意向はないことから「ブラックストーンによるTOBの実現性は低い」(同)と判断したのだ。

 これで再び実際に実施されているTOBの中では最高値のポジションを獲得したフォートレス。一方で、ユニゾHDが従業員の権利・立場を一番に考えた結果と言うEBOは、買い付け価格を一段と引き上げない限り成立が絶望的になった。もともと「他人の口出しを嫌い独立心が強い」(みずほ銀関係者)というユニゾHDの小崎哲資社長は、各ファンドによる買収提案を退けEBOという結末に導いたことで「してやったり、という感じだった」(ユニゾHD関係者)が、ファンドもそう簡単には降参しなかった。

 今後は小崎社長が新たな展開を受け、どのような手を打つかによって左右されそうだ。より高値を提示しているブラックストーンととうとう合意するのか、それとも当初はホワイトナイトだったフォートレスとよりを戻すのか。フォートレス関係者は「会社(ユニゾHD)は我々がホワイトナイトだった時に、TOB価格をブラックストーンの当初提示価格の5000円まで引き上げるよう要請していた。それに十分応えたのだから、我々の新提案に賛成してくれてもいいよね」と期待する。

 株価からも目が離せない。株価はブラックストーンの買収提案を受け5500円程度で推移している。この状況が続くようだとフォートレスのTOBも成立しない。フォートレスのTOBが終わるまでに、ブラックストーンとユニゾHDの交渉がまとまりそうにない、という観測が株式市場で出て株価が下落することが前提になる。それとも、いざとなったらフォートレスがもう1回、TOB価格を引き上げるという奥の手を繰り出すのか。腹の探り合いはまだ続く。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。