政府は新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中国湖北省武漢市に残された日本人退避のため、28日夜に民間チャーター機1機を派遣する方向で最終調整に入った。厚生労働省は「人権侵害に当たり、法的にも権限がない」として、退避した日本人の強制的な隔離をせず、自主的な医療施設の検診を呼びかける方針だ。

中国で新型肺炎の被害が拡大しており、政府は日本人退避のため、28日夜に民間チャーター機1機を派遣する方向で最終調整に入った(写真:Featurechina/アフロ)

 民間チャーター機は全日本空輸が手配する。28日夜に羽田空港を離陸し、29日未明に武漢をたって同日朝に羽田空港に帰国する見通しだ。全日空によれば、成田ー武漢定期便で使用している国際便用の機体ではなく、より多くの座席が確保できる国内便向けのボーイング767-300ERを使用する。

 過去に、政府が民間チャーター機を使って在外邦人の帰国を支援したのは、2002年6月のインド・パキスタン情勢の激化や1998年5月にインドネシアのジャカルタで発生した暴動など、政治情勢の悪化が多い。外務省海外邦人安全課は「全ての記録を見直したわけではないが、感染症による退避支援は恐らく初めてだ」としている。

 厚労省は28日、同チャーター機に医師1人、看護師2人、検疫官1人を同乗させることを決めた。日本からチャーター機に乗り、退避する日本人に対して復路の機内で診察や検疫を実施する。高熱などで移動が困難と医師が判断した場合は、チャーター機への搭乗を見合わせることもある。

 新型コロナウイルスの潜伏期間はいまだ分かっていないが、他種のコロナウイルスの特徴から最大で14日程度とみられる。厚労省は退避した日本人に対し、疑わしい症状がある場合は入国後に医療機関の受診や入院を要請するほか、症状が現れていなくても、14日間は急用がない場合は自宅での待機を依頼する。加えて、帰国者と定期的に連絡を取り、状況をモニタリングする方針だ。

 武漢に現地企業との合弁で工場を持つホンダは、駐在員やその家族30人程度の大半を政府チャーター機で帰国させる方針。「帰国者の具体的な移動については、政府の方針に即した取り扱いをする。詳細については申し上げられない」(ホンダ広報)としている。武漢支店に2人の日本人が勤務するみずほ銀行は、「1人は帰国させる方向で調整中だが、帰国後については政府の対応などをみながら調整していきたい。現状で詳細が決まっているわけではない」(みずほフィナンシャルグループ広報)という状況だ。

 政府による民間チャーター機は、政府が航空会社に発注するもので、その費用は政府が負担する。帰国希望者に対して、在中国日本大使館は「帰国に対して費用が発生することがある」としているが、その詳細は明らかにしていない。

 外務省によれば、28日朝時点で帰国を希望しているのは650人程度。28日夜に羽田空港をたつ第1便には約200人が搭乗する予定だ。政府は29日以降に民間機を使った第2便を出すことを検討している。外務省は、政府専用機の使用についても「あらゆる手段を追求している」(海外邦人安全課)として可能性を除外しなかった。

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