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 ラーメンチェーンを展開する幸楽苑ホールディングスは1月28日、幸楽苑の全517店舗で「楽天ポイントカード」を利用できるようにすると発表した。楽天が開発するAI(人工知能)技術も店舗に導入し、連携を深めていく。

幸楽苑ホールディングスの新井田昇社長(左)と楽天の三木谷浩史会長兼社長(右)

 幸楽苑には年間およそ6000万人が来店する。しかし、「顧客の属性や嗜好などのデータを十分把握できていなかった」(新井田昇社長)。楽天ポイントカードを導入することで、顧客の属性と購買行動をひもづけ、どの層にどんな商品のニーズが高いのかを分析し、商品開発の精度を高める。

 2019年度には実店舗で、楽天技術研究所が開発したAI搭載のデジタルサイネージ「幸楽苑 UmaAI(うまあい)くじ」の試験導入を目指す。画像認識技術で来店客の年齢や性別を判断し、おすすめメニューを表示する。写真撮影すれば、来店客の顔写真入りの割引クーポンがその場でプリントされる。友人に渡すなど、口コミを広げるツールにもなる。

AI搭載のデジタルサイネージ「幸楽苑 UmaAI(うまあい)くじ」の実演をする幸楽苑ホールディングスの新井田昇社長

 タッグを組んだ背景には、2人の経営者の“師弟関係”がある。

 新井田社長が楽天の三木谷浩史会長兼社長に出会ったのは15年前。当時楽天の本社があった六本木ヒルズ(東京・港)の前を歩いていた新井田社長は、EC(電子商取引)の寵児として憧れていた三木谷会長を偶然見かけ、声をかけた。「インターネットとリアル(店舗)との融合などについて情熱的に意見を語る姿が印象的だった」と三木谷会長は振り返る。

 その後、幸楽苑は本社が福島県ということもあり、同じ東北の仙台に本拠地を置く東北楽天ゴールデンイーグルスの立ち上げに協力するなど、新井田社長は三木谷会長との縁を深めてきた。

 「ITが外食業界の次の成長には欠かせない」。その思いを強くした新井田社長は、09年7月から12年3月までの約3年間、楽天に出向。ECサイト「楽天市場」での営業や出店企業への助言などをするECコンサルタントを担当した。

 幸楽苑は経営改革の岐路に立たされている。

 17年3月期は負傷した従業員の指の一部がラーメンに混入した問題で、客離れが進み、減収減益になった。業績回復には時間がかかり、18年3月期の既存店売上高は前期比1.6%減で、営業赤字に転落した。

 「ラーメン専門店は競争が厳しく、消費者からも飽きられやすい」(外食大手幹部)。ペッパーフードサービスとフランチャイズ契約を結んで、採算の悪化した十数店舗を人気ステーキ店「いきなり!ステーキ」に業態転換するなど、なりふり構わない経営改善を図ってきた。

 こうした中、18年11月に社長に就任したのが新井田氏だ。師匠三木谷が奮闘する弟子に送ったエール。それが今回のパートナーシップだった。

■変更履歴
「幸楽苑UmaAI(うまあい)くじ」の導入時期に一部誤りがありました。正しくは「2019年度中に実店舗での試験導入を目指す」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2019/01/29 17:00]