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 世界のトップ選手が3m先の至近距離で剣を交え、ポイントが加算されるたびに大きな歓声が上がる――。1月26、27日に東京・港で開催された「高円宮杯フェンシングワールドカップ東京大会」。日本の男子団体は残念ながらメダルを逃したものの、2日間で昨年の3倍を超える5248人が来場し、大盛況のうちに幕を閉じた。

 観客のボルテージを高めたのは、ピストと呼ぶ試合場の周りを立ち見の観客が囲む「アイランドスタイル」。応援グッズを無料で配布し、ルールを知らない子供に関係者が手取り足取り解説するなど、フェンシングを「身近」に感じてもらおうという取り組みが随所に見られた。仕掛けたのは日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏(33)だ。

日本フェンシング協会の太田雄貴会長(写真:竹見脩吾)

 「フェンシング界を変える」。そう決心して協会会長に就任したのは2017年8月。理事の中でも最年少だったが、2大会連続で五輪メダルを獲得した抜群の知名度を武器に、体質改善に取り組んできた。エンターテインメント性を追求する大会演出は、太田改革の一つの象徴だ。

 そんな改革者に1月、新たな仲間が加わった。協会が転職サイト運営のビズリーチを通して採用した「兼業・副業限定の戦略プロデューサー」だ。条件は月4日程度の勤務で日当1万5000円。1127人の応募者の中から、日本コカ・コーラに勤務する高橋オリバーさん(48)ら4人が選ばれた。

 高橋さんは日本コカ・コーラの東京2020五輪ゼネラルマネジャーと兼務する。協会では強化本部の副本部長として、選手目線に立ったマーケティング活動の提案などを担う。さらに、デジタルサービスプロバイダー所属の江崎敦士さん(53)が協会の経営戦略アナリストに就任。加えて37歳の女性がPR、30代の男性がマーケティング戦略を担うという。

競技人口を10年で8倍に増やす

 フェンシングの競技人口は現在6000人ほど。太田氏は今後10年で8倍の5万人にする目標を掲げる。「陸上や水泳のようなメジャー競技にはなれないが、人は戦うことが好きで、一定の格闘技人口はいる。『痛くない』格闘技というポジションを確立し、すそ野を広げていきたい」。そのための秘策も温めている。

フェンシング「第4の種目」の創設を目指す太田氏

 フェンシングには「フルーレ」「エペ」「サーブル」という3種目がある。日本での花形はフルーレで、太田氏もこの種目出身だ。「奥行きがあるが間口が狭いというフェンシングの設計を変えていきたい」と考える太田氏の腹にあるのは、第4の種目の創設。剣をスポンジ素材にすることなどを検討中で「ルールを簡略化して誰もが気軽に始められる競技にしたい」という。