駅や電車内での広告が認められるように

 コロナ禍にあって女性ユーザーを中心に利用者を増やしているマッチングアプリ各社はさらなる市場拡大に期待をかける。サイバーエージェント子会社のタップル(東京・渋谷)は21年1月、21年に768億円規模の国内マッチングアプリ市場が今後5年で2倍強の1657億円まで成長するとの予測を発表した。

 市場をさらに大きくしていくためには、現在の主要ユーザーである若年層に限らない社会全体での認知度向上が不可欠だ。そのため各社はインターネット以外での広告に力を入れる。現在、特に目立つのが交通広告だ。コロナ禍で広告減少に苦しむ鉄道各社はマッチングアプリの広告を試験的に認めている。

タップルで実際に出会ったカップルを起用した電車内の広告(タップル提供)
タップルで実際に出会ったカップルを起用した電車内の広告(タップル提供)

 例えば、タップルは21年7月、実際にアプリで出会ったカップルを起用した広告を東京メトロと小田急電鉄の車内と駅構内のデジタルサイネージに出した。Omiaiは21年9月以降、東京のほか大阪、名古屋で、知名度の高い女優を起用した広告を電車内で展開している。

 より気軽に使ってもらうための取り組みも増えている。「ペアーズ」を運営するエウレカ(東京・港)は21年11月、ミニストップとドン・キホーテでプリペイドカードの販売を開始した。国内のマッチングアプリはクレジットカード払いが主流だが、ペアーズはプリペイドカードの販売により、クレジットカードを利用しない顧客の取り込みを狙うだけではなく、日常での露出機会を増やして知名度を向上させたい考えだ。

 大手4社の中でwith(東京・渋谷)の広告展開はオンラインが中心だが、オンライン広告においてもユーザーの獲得だけではなく認知度向上も目的にしている。

「出会い系サイト規制法」という壁

 しかし、より幅広い人たちに知ってもらうための有効な手段となり得るテレビCMや新聞広告は出せていない。テレビや新聞が、上場企業を含むインターネット異性紹介事業者の広告出稿を認めていないためだ。エウレカは20年11月から、同社が運営する結婚相談所「ペアーズエンゲージ」のテレビCMを放映している。マッチングアプリとしてはテレビCMを流せないため、結婚相談所のCMを流している。

 マッチングアプリを含むインターネット異性紹介事業者は、いわゆる出会い系サイト規制法によって規制されている。マッチングアプリ側には、児童買春など犯罪の温床になってきた旧来型の出会い系サイトとは明確に区別してほしいという希望がある。

 そこでエウレカは同業他社も巻き込んで、国会議員や経済産業省に対してマッチングアプリと旧来型の出会い系サイトで異なる法的扱いをするように求める活動を進めており、21年9月に提言書を提出した。同社は日本国内の未婚化・少子化解決に寄与することを標榜しており、提言書ではマッチングアプリが出生動向に及ぼす影響の分析を求めた。

 若年層の間ではマッチングアプリを使った出会いがすでに一般的なものになってきている。今後さらに幅広い人たちに受け入れられるためには、さらなる安全性の向上などを進める必要もありそうだ。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。