新たな出会いを生むマッチングアプリ。大手各社のユーザー数は新型コロナウイルスの感染拡大当初、一時減少したものの、その後は一転して増加している。各社は利用者をさらに増やすために、若年層に限らない社会全体での認知向上を目指している。しかし、「出会い系」へのネガティブイメージからマスメディアでの広告展開は難しい。政府に対し、旧来型の出会い系サイトと区別するよう働きかける動きも出てきている。

 新型コロナの感染が広がり始めた2020年春頃、マッチングアプリ各社はユーザー数の減少に苦しんだ。全国を対象とした緊急事態宣言が発令され、マッチングしたとしても気軽に対面で会えない状況が続いたためだ。

 しかしその後は、数度にわたる感染拡大の波があったにもかかわらず、国内大手4社のユーザー数はいずれも増えている。例えば、ネットマーケティング(東京・港)が運営する「Omiai」の月間アクティブユーザー数(MAU)は20年4月から同年7月まで前年同月比でほとんど増えなかったが、同年11月は同30%増を記録した。

 「『コロナ慣れ』により対面で人と会うことへの抵抗感が薄まったことに加え、対面での出会いの機会の消失が長期化し、コロナ禍のような緊急事態の中で1人でいることに不安を覚えた人がマッチングアプリに流入したのではないか」。ネットマーケティングの清水宏昭氏はユーザー数の増加をこう分析する。Omiaiでは21年4月に不正アクセスによる会員情報の流出が起きているが、その後もユーザー数は増え続けているという。

 国内の大手マッチングアプリは一般的に、男性が有料、女性は無料というビジネスモデルだ。それでも、これまでは男性ユーザーが女性に比べて多いのが普通だった。しかし、コロナ禍以降はアプリによっては女性ユーザーの増加が目立つ。Omiaiの20年11月のMAUは、男性が前年同月比で23%増。それに対し、女性は43%増となり、18年以降で初めてMAUで女性が男性を上回った。

 なぜ女性ユーザーの伸びが大きいのか。ネットマーケティングが21年6月に実施した調査によると「普通に生活していて、異性との出会いがあるか」という質問に対して「出会いがない」と答えた25歳以上の男性は5割前後だったのに対し、女性は7割を超えた。清水氏は「女性の方が新型コロナの感染対策への意識が高く、対面での接触機会を避けていて、結果として出会いの機会がなくマッチングアプリに流入しているのではないか」とみる。

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