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 日経ビジネス電子版で18日に「オリオンビール、野村・カーライルが買収へ」として報じた通り、野村ホールディングス(HD)傘下の野村キャピタル・パートナーズ(NCAP)と投資ファンドの米カーライル・グループは23日、ビール系飲料5位のオリオンビール(沖縄県浦添市、与那嶺清社長)を買収すると発表した。野村HDは17年11月に、リーマン・ショック後に事実上撤退していた自己資金投資(プリンシパル・ビジネス)に再参入することを表明しており、今回がその第一号案件となる。

23日午後、沖縄県浦添市で記者会見するオリオンビールの与那嶺清社長(写真:共同通信)

 NCAPが51%、カーライルが49%出資する共同出資会社を通じて株式公開買い付け(TOB)を実施、605人いるオリオンビールの株主から株式を取得する。買収1株当たりの公開買い付け価格は7万9200円。買収総額は570億円程度となる。

 野村HDが08年まで実施していた自己資金投資では、すかいらーくやハウステンボスなどに投資をしていたが、金融規制の強化などを理由に手を引いていた。再開するにあたって18年1月にその中核企業としてNCAPを設立し、1000億円程度のファンドを立ち上げることを明らかにしていた。

 大企業中心だった以前の自己資金投資とは異なり、再開後の投資方針として野村HDの担当者は「高齢化社会が進展するにつれて、中堅企業中心に事業承継に伴う資金繰りや資本政策の面で悩みが増えている。そのソリューションを提供していきたい」と語っていた。

 今回のオリオンビールは、こうした方針に合致する案件といえよう。オリオンビールの株主数は、創業者の親族や沖縄県民などを中心に長期保有者が多いものの、株主は高齢化しており、相続を通じて株主数も年々増加していた。会社側に株主買い取りを依頼するなど、株式の売却ニーズも増えていた。

「5年後視野の上場、野村証券がかかわる」

 しかし、オリオンビールの株式は未上場の譲渡制限付き株式であるため、売却による資金化が難しい。こうした資本政策上の悩みを解決し、中長期的な企業価値向上を目指すために、野村とカーライルが組んで出資・株式買い取りというスキームを組み立てたようだ。

 NCAPでは同時並行で複数の案件が進んでいたが、「会社の知名度と出資理由が、野村のプリンシパル・ビジネスの再開を知らしめるのに最も適していると考え、オリオンを一号案件にしたのだろう」と事情を知る関係者は分析する。

 23日に東京で野村HDが開いた会見で、NCAPの前川雅彦社長は「5年後の新規株式公開(IPO)も視野に入れている。その際は野村証券がかかわることになるだろう」と話した。野村HDは、自己資金投資を通じて関与を深めた企業に対し、その後の新規株式上場やM&A(合併・買収)など、ファイナンスに関しグループ全体でバックアップする。

 自己資金投資を企業との接点を作るきっかけにし、その後、自社の収益機会につなげていく好循環を構築できるのか。一つ一つの案件の成否が次の案件を呼びこめるかどうかを左右する。オリオン買収はその始まりに過ぎない。