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 品質不正問題で揺れるSUBARUで、また新たな懸念が浮上した。23日、主力工場の群馬製作所(群馬県太田市)で16日夜から車両の生産と出荷を停止していると発表した。外部から調達している部品の一部に不具合が見つかったため。28日にも稼働を再開する予定という。1月から群馬製作所長として生産の指揮を執る細谷和男副社長は試練に直面している。

 不具合のあった部品はハンドルと車輪の動きを電動で制御する電動パワーステアリング。走行中やエンジンをかけた時点でハンドルが重くなるなどの問題が発生するという。多目的スポーツ車(SUV)の「フォレスター」や「XV」、小型車「インプレッサ」で直近に生産した車に組み込まれていた。

主力車の生産停止に追い込まれている(写真はインプレッサ)

 「今のSUBARUにとって重要なのは風土改革。この人以外にできる人はいない」。不祥事が相次ぐなか、中村知美社長は細谷氏をこう評して製造本部長兼群馬製作所長に指名した。細谷氏が得意なのは主に販売や管理部門だ。入社は1982年。06年に経営企画部長に就いた。販売会社の東京スバル社長を経て、12年に本社に戻り、人事部長や国内営業本部長を務めている。18年4月には再び東京スバル社長に着任している。畑違いの製造トップへの就任は「晴天の霹靂だった」(細谷氏)と話す。

 異例の人事の狙いは不正が相次いだ組織の立て直しにある。17年10月に約25万台のリコールにつながる無資格検査問題を発表し、同年12月に燃費データで書き換えが表面化した。18年6月には新たな不正が判明し、吉永泰之前社長(現会長)がCEO(最高経営責任者)を退いた。ただ、トップ交代をもってしても、社内の体質はすぐには改まらなかった。

 18年9月にブレーキやタイヤの不適正検査が発覚。11月には、直近の10月まで不正が続いていたことが明るみになった。立ち入り監査に関わった国土交通省の幹部は「経営陣が現場を知らず、従業員と溝がある。SUBARUの闇は深い」と話す。

群馬製作所長として生産の指揮を執る細谷和男副社長

 細谷氏の鞍替え起用は「ピラミッド構造を脱する必要がある」と考えた中村社長が決めた。技術を知らないのに製造トップが務まるのかとの声もある。それでも「旧態依然としたやり方を変えるのが最優先課題」と吉永会長も後押しした。

 「技術力はしっかりしているが、生産の急拡大でスピードを求められ、部門間のコミュニケーションがうまく機能していない」と細谷氏は現状を分析する。「お客さん目線を『情報』として工場に伝え、組織を機能的に回るようにしていく」。19年の国内生産は65万台と前年より微減させ、生産工程に無理がないかを再点検する作業を進めていた。

 その矢先の工場停止。外部で調達した部品の不具合のようだが、信頼回復への取り組みに水を差した。経営と現場の距離が開いた組織の立て直しは、そもそも一筋縄でいく話ではない。工場トップが交代した直後の大規模トラブルで、現場は消沈するか結束するかの岐路に立っている。