「屋内など回線がつながりにくい場所が一部にあるのは事実。お客様の声を真摯に受け止めながらネットワーク品質を向上させていきたい」

「携帯電話事業を営む者として(安定した)ネットワーク構築は基本だ」と述べる楽天モバイルの山田善久社長
「携帯電話事業を営む者として(安定した)ネットワーク構築は基本だ」と述べる楽天モバイルの山田善久社長

 楽天子会社で携帯電話事業を手掛ける楽天モバイルが1月23日に開催した記者説明会。山田善久社長は神妙な口調でこう語った。この日、同社は2019年10月からモニター5000人に限定して提供していた携帯電話の試験サービスで、2万人を追加募集すると発表。楽天モバイルの携帯電話事業をめぐっては、試験サービスを通じてエリアや通信品質、インフラの安定性に関する課題が次々に表出していた。4月に始める予定の本格サービスに備え、インフラに潜む問題点を洗い出し、改善するのが試験規模拡大の狙いだ。

 追加募集の対象者は東京都23区と大阪市、名古屋市、神戸市に住む満18歳以上で、国内の音声通話やデータ通信、国際通話、国際ローミングなどが無料になる。23日から2月3日まで申し込みを受け付け、3月31日までサービスを提供する。4月の本格サービス開始後は改めて楽天モバイルと契約する必要がある。

楽天モバイルが1月23日に発売した小型スマホ「Rakuten Mini」
楽天モバイルが1月23日に発売した小型スマホ「Rakuten Mini」

 自前の通信インフラをゼロから構築して携帯電話事業に参入する楽天モバイルだが、これまでは苦い経験の連続だ。そもそも商用サービスの開始時期と表明していたのは19年10月。ところがサービスの要となる「基地局」の設置工事が遅延し、総務省から3度にわたって行政指導を受けた。

 それでもスケジュールに間に合わず商用化を20年春まで延期した。代わりに始めた試験サービスでは19年12月10日午前、およそ3時間にわたる通信障害が発生。事態を重く見た総務省の強い要請を受け、楽天側は1月14日に再発防止策を同省に提出した。

 度重なる政府からのプレッシャー。尻に火が付いた楽天モバイルが講じた一手は経営体制のてこ入れだ。1月6日、親会社である楽天の会長兼社長で楽天モバイルの会長も務めていた三木谷浩史氏が、楽天モバイルCEO(最高経営責任者)を兼務する人事を発表した。

 しかも同日、愛宕神社(東京・港)に初詣に訪れた三木谷氏は待ち構えていた報道陣に対して本格サービスの開始時期を「4月」と初めて明言。創業間もないころの楽天は愛宕神社と背中合わせの小さなビルに事務所を構え、移転してからも全役員を引き連れての初詣を欠かしてこなかった。いわば楽天にとっての“聖地”で、本格サービスの再延期を否定してみせたわけだ。

東京・恵比寿に新規開設した楽天モバイルの携帯電話ショップ
東京・恵比寿に新規開設した楽天モバイルの携帯電話ショップ

 通信インフラは今や音声通話よりもデータ通信が主役。用途は物流や交通、決済など幅広く、もはや止められないインフラになっている。実際、ソフトバンクが18年12月6日、4時間半にわたって起こした通信障害では、利用者約4000万人の日常生活が大きな影響を被り、物流や航空など様々な企業の業務も一時滞った。

 しかも国内では近く、次世代通信規格「5G」を用いた高速通信サービスが本格的に立ち上がる。携帯大手が3月から開始し、楽天モバイルも6月以降に参入する計画だ。5Gは将来的には自動運転や遠隔医療などにも使われる見通しで、通信障害による被害はより深刻になる。携帯電話会社が運営する通信インフラの安定稼働に対する責任は重くなる一方だ。

 設置工事の遅れが指摘されてきた基地局数については「3月末までに当初計画の3432カ所を大幅に上回る4400カ所になる」(山田社長)としている。自前の通信インフラ整備で蓄えた技術やノウハウを世界の通信会社などに外販すると内外でアピールしてきたが、そのもくろみを実現する上でも、基地局の展開だけでなく全体として「止まらないインフラ」をきっちりと整えるのが先決だろう。果たして残り3カ月で達成できるだろうか。

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