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 国土交通省は23日、ヤマトホールディングス(HD)の子会社「ヤマトホームコンビニエンス」(YHC、東京・中央)に対し、法人向け引っ越し代金の過大請求があった問題で貨物自動車運送事業法に基づく事業改善命令を出した。過大請求のあった123事業所に対しては車両の使用停止などの行政処分も出した。

昨年8月に国交省による立ち入り検査を受けた(写真:共同通信)

 これを受けてヤマトHDは同日、「具体的な改善策などについて2月25日までに国土交通省に報告する。(顧客や関係者に対し)改めて深くお詫び申し上げる」と発表した。

 この問題はYHCで支店長を務めていた元社員の告発をきっかけに昨年7月に明らかになった。背景にある引っ越し業界特有の商慣習が変わらなければ同様のトラブルが再び起きる可能性が残る。

 昨年7月、YHCが過去2年2カ月間に引っ越し業務を契約した法人顧客のうち、8割に当たる企業に対し総額約17億円を過大請求していたとヤマトHDが公表。その後同社は過去5年に遡って追加調査し、過大請求の金額が31億円まで膨れ上がると推計していた。本来であれば、事前の見積もりよりも実際に運んだ荷物が少なければ、その分、料金を返還する契約になっていたが、YHCは返していなかった。元社員の代理人を務める弁護士によると、幅と奥行きが1m、高さ1.7mのカゴ1つに収まる荷物を、5トントラックで運ぶものとして見積もったケースもあったという。

 こうした悪意ある水増しが行われたのは、YHCが業界に根付いた「どんぶり勘定」意識から抜けきれなかったためだ。同社では「引越アドバイザー」と呼ぶ担当者が規定のルールに沿って家財ごとにポイントを積算して見積額を出し、実際に運んだ量に応じて料金を修正することになっていたが、大半の社員はその内容を知らなかったり、知っていても「(返金しないのは)みんながやっている」と返金手続きを放置したりしていた。

 もう一つの要因は、顧客との情報格差。どこからどこへ移るか、部屋は何階か、季節や日程はいつか、荷物の量はどれくらいか、など引っ越しは1件ごとに異なる。そうした条件の違いでどれくらいコストがかかるか業者は熟知している一方、顧客側は知識や経験に乏しい。それが不正への誘因となり得る。

 「稼げるところから稼ごうとしている」。不透明な引っ越し料金についての不信感は以前から存在している。業界は「人手不足」という価格高騰の言い訳をするが、利用者にとって納得感のある商慣習が求められている。