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 「物言う株主」として知られる村上世彰氏が、東芝機械に対するTOB(株式公開買い付け)を1月21日から始めた。同氏は2019年末、レオパレス21に対して全取締役の解任を目的とした臨時株主総会の請求もしている。なぜ強硬手段を次々と繰り出しているのか。村上氏が、拠点とするシンガポールから日経ビジネスの電話インタビューに応じた。

村上世彰氏はかねて日本企業の企業統治のあり方を問題視してきた

村上さんが関わる投資会社が東芝機械に対して1株3456円で1月21日からTOBを開始しました。現在、東芝機械株を13%弱お持ちとのことですが、買い付けは所有割合で43.82%を上限としています。なぜ過半数や全部の取得ではないのでしょうか。

 ほかの株主と一緒に東芝機械の今後を考えたいと思っているからです。過半数を取らないのはあくまでも一般の株主の方に決定権を持ってもらいたいからです。

村上さん側からTOBの通告を受けたとして、東芝機械が1月17日に発表したリリースを見ると、「本公開買付けについて当社との間で何ら実質的な協議を行うことなく」とあります。会社側と対話はしてこなかったのでしょうか。

 東芝機械株はだいぶ前から持っています。そしてずっと会社側とは対話を希望してきました。ですが全然応じてくれません。最初にアポイントが入ったときは数時間前にドタキャンされました。社長に会えたのはたったの1回だけで、その後は会ってくれません。これまで合計すると、会社側と会えたのは5回、取締役会に手紙を出した回数が13回です。

 直近では1月10日にTOBの件も含めきちんと会って話をしませんか、と提案したのですが、それもかないませんでした。それをなぜ、協議もなくいきなりこのような虚偽を書くのでしょうか。お互いに会話ができていれば、こういう事態にはならなかったと思っています。

今回は東芝機械側がTOBの通告を受けた、と発表しました。TOBが仕掛ける側ではなく、受ける側から明らかにされるのは異例のことです。

 私もなぜ会社が1月17日にTOBの通告を受けたと発表したのか分かりません。とても気になります。結果的に1月20日の東芝機械の株価は大きく動いてしまいました。理論上はまだTOBをやらない可能性だってあったわけで、会社の対応は理解できません。この株価のアップダウンで損をした人がいたら、それは会社の責任です。こんなことをする人たちにはもう今後、事前の交渉はできません。

東芝機械には、これまで何を求めてきたのでしょうか。

 東芝機械はこれまで安定した利益を上げてきました。これからもその技術力を武器に利益を出していけるでしょう。あとはきちんと資産を有効活用してほしいのです。例えばROE(自己資本利益率)ならば、全く使っていない資産を株主還元すれば劇的に上がります。そうした議論をしようとしましたが、のれんに腕押しでした。だからもっと持ち株比率を増やすことで、そうした議論ができるようになりたいのです。

全く使っていない資産とはどういうものを指すのでしょうか。

 例えば現金+売掛金+投資有価証券-買掛金で500億円程度あるはずです。これを有効活用してほしいのです。既存のプロジェクト以上のIRR(内部収益率)が出るのであれば、株主還元ではなく設備投資に使ってもらっても構いません。

東芝が完全子会社化を狙って半導体製造装置のニューフレアテクノロジーにTOBをかけました。東芝機械は第2位株主としてニューフレア株を15.80%持っていました。そのニューフレアに対し、HOYAが東芝の賛同を前提に、東芝よりも高い価格で対抗TOBをかけようとしました。東芝機械は最終的に価格が低い東芝のTOBに応じましたが、このことも今回の決断に影響を与えたのでしょうか。

 ニューフレア株の影響は大いにあります。東芝のTOBに応じようが応じまいが、その前から東芝機械にはずっと、事業面で影響がないニューフレア株を持っていてどうするのかと質問してきました。なぜ株主価値を上げるべく、自分たちの資産を有効活用しないのでしょうか。彼らはあまりにも何も考えていなかったのです。例えばなぜニューフレアに対して、自社株買いをしてくれれば応じるといった交渉をしないのか、ということです。