行政代執行の場合、それ以前の命令の手続きに応じない時点で、所有者に資力が無いことが判明しているケースが多い。命令に応じなければ、所有者のなけなしの資金も過料として徴収されてしまう恐れがあるため、そもそも命令を躊躇する自治体もあった。

相続人が50人以上

 略式代執行の場合、「所有者が不確定」であることを確定させることにも大きな人的負担と費用負担が生じてしまう。調査自治体から所有者調査の負担が重かったケースを申告してもらったところ、177件の回答のうち、127件で既に所有者が死亡していた。うち62件は死後10年以上が経過していた。

 ある事例では、昭和40年代に所有者が死亡後、相続登記がされていなかった。この場合、配偶者や子どもなどの法定相続人に分割して相続がされたとみなされる。しかし、その法定相続人も死亡すると、さらに分割して相続がされ、権利者がねずみ算式に増えてしまう。この自治体は200件以上の戸籍調査を実施し、約5ヶ月間をかけて特定した相続人は50人以上に上った。

 こうしたケースでは、相続人は土地の存在どころか元々の所有者を知らないため、自治体が管理を求めても相続放棄をしてしまう。本来、最後に放棄をした相続人にはそれでもなお法的に管理責任があるのだが、縁遠い相続人に費用負担を迫ることも難しい。

 相続人の名前が判明しても、連絡が取れないことも多い。海外にいれば所在地の追跡が難しくなるし、刑務所に収監されていたり、高齢者施設に入所していたりする場合は、個人情報保護が壁になり、所在が確認できないこともある。

 借地の上に立てられた空き家の場合も問題が生じやすい。略式代執行をしても土地を売って費用を回収することはできないからだ。また、空き家を撤去することで土地が再利用可能になり、土地の所有者に公金で便益を図ることになりかねない。そのため、あえて家の基礎だけを残して撤去するケースもあった。

 行政代執行、略式代執行のいずれのケースでも、自治体の負担の大きさが空き家対策を滞らせている実態が総務省の調査で浮かび上がった格好だ。重要なのは、対策が遅れるほど、所有者の高齢化や分割相続の進行で問題は加速度的に複雑化していくという現実だ。総務省はこの調査結果を基に、20年に予定されている空き家法の改正案の作成に取りかかる考えだ。

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