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 2015年に全面施行された空き家対策特別措置法に基づき、自治体が危険な空き家を強制撤去した際、費用を全額回収できたのは約1割に止まっている。総務省が実施した、各自治体へのケース調査でこんな事実が判明した。所有者が分からなかったり、相続放棄がされたりして求償が困難なケースが8割に上る。総務省は22日にも調査結果を発表する。

 映画「おおかみこどもの雨と雪」のモデルとなった富山県上市町。剱岳を望む豊かな自然が特徴だが、2015年の国勢調査によると、人口は5年間で4.7%も落ち込んでいる。同町は2016年8月、所有者死亡により放置されていた空き家の強制撤去に踏み切った。築50年の平屋建てだが、火災により焼け焦げた骨組みが残されているだけで、倒壊の危険性があった。

 相続人8人はいずれも相続放棄をしたため、所有者は不確定。この場合、土地の売却などにより得た資金で自治体は撤去費用を回収できるが、公道に面していない土地のため、売却は難しいと町は判断した。162万円の費用は町の全額負担となった。

空き家対策に自治体は頭を悩ませている(写真:アフロ)

 国土交通省の調査によると、空き家のうち、別荘などの二次的な住宅ではなく、賃貸や売却が予定されていないものは318万戸(2013年時点)。過去20年で2.1倍に増え、全国の総住宅数の5%超にあたる。対策のために2015年に全面施行された空き家対策特別措置法は、倒壊などの危険がある「特定空き家」に関し、所有者が改善に応じない場合や、所有者が不確定な場合、自治体が強制撤去できる枠組みを整備した。撤去までの流れは以下の図のようになる。

空き家の強制撤去までの流れ

 実際の業務の中では、上市町のように撤去した費用が回収できないなど問題が発生するケースが多い。そこで、総務省は自治体の参考となるよう、実地調査に取り組んだ。15〜16年度に強制撤去を実行したほぼ全ての自治体を含む93自治体を調査対象とした。

撤去費用は1億3000万円

 調査対象の自治体で強制撤去が行われたのは48件。合計で約1億3000万円の撤去費用がかかったが、費用全額を回収できたのは5件に止まった。

 所有者が確定している「行政代執行」は10件。うち1件で全額を回収したが、残り9件は一部回収に止まるか、回収方法も決まっていない。一方、所有者が不確定の「略式代執行」は38件で、うち土地の売却などによる全額回収は4件。一部に公的補助を利用したのが13件。既に自治体が全額負担を決めたのが13件に上る。