ロシア外務省のザハロワ報道官は1月中旬、厳しい表情で記者会見に臨んだ。「ロシア外務省のウェブサイトは2018年1~9月に7700万回のサイバー攻撃を受けた」と訴え、発信元として日本を筆頭に米国、英国、ドイツなど計14カ国を名指しした。

ロシアはサイバー攻撃の被害者だと訴えるロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官(写真:ロイター/アフロ)
ロシアはサイバー攻撃の被害者だと訴えるロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官(写真:ロイター/アフロ)

 18年10月にはロシア軍の諜報部員7人が米司法省からサイバー攻撃の疑いで起訴されている。ザハロワ氏は「西側諸国はいつもサイバー攻撃の実行者として根拠なくロシアを批判する」と不満をにじませ、自分たちこそ被害者であると示唆した。

 その主張通りであれば、ロシアに対するサイバー攻撃を手掛けるハッカーが日本に存在する。加えて日本国内にある端末が第三者に乗っ取られ、サイバー攻撃の「踏み台」として悪用されている可能性が高い。知らず知らずのうちに、攻撃に加担していることになる。

 踏み台として急増しているのが、ネット接続機能を持つ防犯カメラや録画機、テレビなどの「IoT機器」だ。情報セキュリティー会社、米マカフィーが18年に発見したIoT機器を標的とする新種のウイルスの数は前年比3倍となった。

 情報セキュリティー会社、米シマンテックのグレッグ・クラークCEO(最高経営責任者)は「企業や家庭にあるIoT機器の多くでソフトウエアの欠陥が修正されないまま放置されている。19年も踏み台となるIoT機器が増えるだろう」と予想する。

「IoT機器がサイバー攻撃に悪用されている」という米シマンテックのグレッグ・クラークCEO
「IoT機器がサイバー攻撃に悪用されている」という米シマンテックのグレッグ・クラークCEO

 IoT機器の所有者がソフトウエアの更新や、パスワードの設定などの基本的な情報セキュリティー対策を怠れば、「自分たちは日本からのサイバー攻撃の被害者だ」というロシア外務省の主張を補強することになりかねない。

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