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対岸の火事ではないファーウェイ問題

 経済合理性の観点からは「スパイ行為に加担することなどあり得ない」というファーウェイの言い分には、一定の説得力がある。現在、同社は170カ国以上で事業を展開しており、製品開発には様々な信条を持つ世界14拠点の技術者が関わる。仮に故意にセキュリティーホールを作ろうとしても、一切露見せずにやり遂げるののは相当な難事だ。

 任氏は西側諸国における製品排除の影響について問われ、「当社の設備を買わないと決めた顧客もいれば、その逆もいる。製品排除の動きは全体として影響はないだろう」と述べた。もし明確な不正の証拠が出てくれば、顧客を一夜にして失うことになりかねず、リスクが大きすぎる。

任正非(レン・ジェンフェイ)氏
華為技術(ファーウェイ)創業者兼最高経営責任者(CEO)。1944年10月中国・貴州省の農村部で生まれる。同省で高校まで通ったのち、重慶建築工程学院(現・重慶大学土木建築学部)を63 年に卒業。土木工学関係の仕事に74 年まで従事したのち、遼陽化学繊維工場の建設担当として軍部の工兵団に参加。その後、軍人階級のない技術職の中で副長官まで昇進。工兵団での実績を背景に82年に中国共産党の全国代表大会に招聘される。83年、中央政府が工兵団を全面的に解散したため、軍から退職。深圳南海石油での勤務を経て、87年に2万1000元(約2500ドル)の資本金でファーウェイを設立。翌年ファーウェイの最高経営責任者に就任し、現在に至る。

 ただし、問題は任氏をはじめとするファーウェイの経営層でも、完全に会社を掌握できているとは言い切れない点だ。中国では共産党がほとんどの組織に様々なレベルでネットワークを張り巡らしている。例えば中国企業の労働組合は共産党の指導のもとで動く組織だ。日本企業が中国の国有企業と作る合弁企業の要職にも、共産党員が就くことが多い。

 もちろん、どのような政治思想や信条を抱くかは個人の自由で、企業がコントロールできることではない。ただ、共産党員の社員が水面下で、企業の価値観と異なる動きをする可能性は否定できない。例えば、経営者の知らないところで、ライバル企業にスパイ行為をする。そんな事態も想定される。中国に関わる多くの企業にとって、ファーウェイのスパイ疑惑は対岸の火事と傍観を決め込むことはできないのだ。